子どもの声に
   耳を傾けて……
 
 12000人「子どもアンケート調査」結果から(中間報告)
 
     調査199812月〜1999年1月実施
 
 
 
      2000年3月30日発行
 
 
    和歌山県国民教育研究所
  「子どもと学校づくり」研究班
 
 はじめに
 
 1998年末子どもアンケート調査にご協力を呼びかけましたところ、県下99校の小中学校の参加をいただき、12000人以上の子どもたちの声を集約することができました。本当にありがとうございました。
 少し遅くなりましたが、中間報告書がまとまりました。まだ検討途中のもので、不十分な点も多くあると思いますが、ぜひ多くの方々にこの中間報告書を読んでいただき、ご意見やご感想などをお寄せていただければ幸いです。最終報告書づくりに生かしたいと思っています。
 今日、子どもと教育をめぐって、「いじめ」、不登校・登校拒否、「学級崩壊」など、教育課題が山積しています。その一方で、それを克服するとりくみも生まれてきています。そのとりくみに共通することは、子どもの姿やくらしを明らかにし、願いを語り合い、子どものことを丸ごととらえることを大切にしながら、何を大事に実践すればいいかを全教職員で、また父母とともに考えとりくんでいるということです。
 この「子どもアンケート」調査集計(中間報告)が、県下の多くの学校や地域で子ども論議をすすめ、学校づくりにご活用されることを願っています。
 
目次
 
はじめに………………………………………………………………………………… 1
 
アンケート調査へのご協力のお願い………………………………………………… 5
 
「子どもアンケート調査」について………………………………………………… 6
 
民研「子どもアンケート調査」中間報告…………………………………………… 7
§1 子どもの意識を探るー単純集計を読む……………………………………… 7
 1 学校生活は楽しいか…………………………………………………………… 7
 2 「いじめ」に対する意識………………………………………………………10
 3 学校への要望……………………………………………………………………13
 4 自分を見つめる目………………………………………………………………16
 5 自己形成の過程でどのような経験をしてきているか………………………18
 6 仲間・グループについて………………………………………………………19
 7 家族、教師に対する意識………………………………………………………21
 8 子どものホッとできる居場所…………………………………………………27
 9 今の社会をどうとらえているか………………………………………………28
 
§2 子どもの意識を探るー学校規模別集計ー……………………………………30
 1 学校生活は楽しいか……………………………………………………………31
 2 「いじめ」に対する意識………………………………………………………32
 (1)「いじめ」………………………………………………………………………32
 (2)イラつき・ムカつき……………………………………………………………32
 3 学校への要望……………………………………………………………………33
 (1)学校・先生への思い……………………………………………………………33
 (2)頼れる人…………………………………………………………………………33
 4 自分を見つめる目………………………………………………………………34
 5 自己形成の過程でどのような経験をしてきているか………………………34
 6 仲間・グループについて………………………………………………………36
 7 家族、教師に対する意識………………………………………………………36
 (1)親からの期待、自分の将来……………………………………………………36
 (2)親への思い………………………………………………………………………37
 (3)教師への思い……………………………………………………………………37
 8 子どものホッとできる居場所…………………………………………………38
 9 いまの社会をどうとらえているか……………………………………………38
 
§3 「子どもの発達」という視点から調査結果を読む…………………………39
 1 社会そのものの行き詰まり感、競争による息苦しさからくる
   閉塞感を感じる子どもたち……………………………………………………39
 2 見えている否定的姿を子どもの発達のもつれとして見ること
   の大切さ…………………………………………………………………………40
 3 家庭を大切にするという当然の側面と、社会の「私事化」の
   進行という側面…………………………………………………………………41
 4 注目すべき学年、小3,4年生………………………………………………41
 5 小学校から中学校への移行期が抱える問題点………………………………43
 
§4 「学校づくり」という視点から調査結果を読む……………………………44
 1 学校づくりのキーポイント……………………………………………………44
 2 「イラツキ」「ムカツキ」は複合汚染 ………………………………………44
 3 子どもの声に耳を傾けて学校づくりを………………………………………45
 4 女子の課題………………………………………………………………………46
 5 男子の課題………………………………………………………………………47
 6 小学校中学年の課題……………………………………………………………47
 7 思春期の課題……………………………………………………………………48
 
§5 学校規模別集計結果を読む……………………………………………………49
 1 小規模校の課題と特徴…………………………………………………………49
 (1)小規模校の小学校の特徴と課題………………………………………………49
 (2)大規模校の小学校の特徴と課題………………………………………………49
 2 中学校の課題と特徴……………………………………………………………51
 (1)小規模校の中学校の特徴と課題………………………………………………51
 (2)大規模校の中学校の特徴と課題………………………………………………52
 
§6 クロス集計結果分析……………………………………………………………54
 
 
 
§7 集計表(別綴)
  子どもアンケート調査集計(小学校編)
  子どもアンケート調査集計(中学校編)
  学校規模別 子どもアンケート調査集計(小学校編)
  学校規模別 子どもアンケート調査集計(中学校編)
  クロス集計 
 
§8 自由記述欄から
  ※最終の報告書の時点で整理し、発表できるようにする予定です。
 
民研「子どもと学校づくり」研究班メンバー ………………………………………55
 
 
 
 
                              1998.11
      アンケート調査へのご協力のお願い
                  和歌山県国民教育研究所 所 長 碓井岑夫
                  同「子どもと学校づくり」研究班 市川純夫
 今、子どもたちの姿に大きな変化が起こっています。そして、多くの問題を抱えた子どもに対応しきれないでとまどう学校の姿が見られることも、残念ながら認めなければなりません。それらを「新たな荒れ」という言葉で表現して、その現象が何であるのかを探ろうという研究の動きも出てきています。
 われわれは、子どもたちの上に見えてきた様々な新しい問題を、子どもの発達の筋道のなかに位置づけてとらえ、その発達の見通しのなかで、それらの問題を克服して人間的欲求を正しく実現していく力を子どもたちに獲得させていくという方向で、考えていかなければなりません。そういうとらえ方ができたときに、はじめて目の前の子どもの困難な姿に立ち向かっていく教育的情熱を持つことができ、教師という仕事に誇りをもってとりくむことができるのではないでしょうか。
 私たちは、このアンケート調査を通して、子どもたちの今おかれている状況を「子どもが現在の自分の状況をどう感じ、どうとらえているか」ということを掘り起こしながら理解していこうと考えます。「今の子どもには、家庭でも学校でも居場所がない」と言われたり、「人間関係のもつれを抱えている」と言われたりしています。そういったことを子どもの本音を聞きながらあとづけ、それを発達の筋道のなかで考えて、学校、家庭のとるべき手だてを探っていきたいと思っています。
 ですから、このアンケートは、これだけで結論をだそうというアンケートではありません。このアンケート結果を集約して、それを学校の現場にお返しして、子どもたちの姿をどう解釈し、どういう方針をたてていったらよいのかを論議していく資料としたいのです。そして、そういう論議を学校、家庭、地域に起こし、ともに子どもの将来、社会の将来を考える共同の体勢を築いていきたいと考えます。
 アンケートの項目のなかには、学校現場で日々苦労してとりくまれている先生方にとってさらにしんどい思いをするような結果が子どもの感想として出ているかもしれない項目があるかもしれません。しかし、それは事実として受けとめる必要があることですし、それを乗り越えてはじめて先が見えてくるという性質のものだと思います。そういう事実を一人で抱え込まないで、子どものことを考えている他の人々と話し合いながら、解決の方向に向かって歩み始めたいものです。
 そういう趣旨のアンケート調査ですので、ぜひご協力いただけますよう、お願い申し上げます。このアンケート調査についてのご意見、あるいは調査にさらに追加していただけるような資料がございましたら、ぜひお知らせ下さい。
「子どもアンケート調査」について
 
1 調査の主体…和歌山県国民教育研究所
 
2 調査の目的…子どもの生活・意識の現状を明らかにする。
 
3 調査の対象…和歌山県下の小学校3年生〜6年生、中学1年生〜3年生
 
4 調査時期……1998年12月〜1月中旬
 
5 調査方法……調査の趣旨と調査用紙を県下のすべての小中学校に送付し、各校の判        断で実施していただいた。
 
サンプル数(人)…小学校  小3   小4   小5   小6    合計           男子   773  759  755  786  3109
         女子   749  772  717  706  2944
           1522 1567 1472 1492  6053
 
        中学校  中1   中2   中3   合計
        男子  1011  929  939 2879
        女子   965  900  928 2793
           1976 1829 1867 5672
民研「子どもアンケート調査」中間報告
 
§1 子どもの意識を探るー調査の単純集計を読む
 
1 学校生活は楽しいか
 
問1「学校は楽しいですか」
○学年進行とともに、「楽しい」「まあまあ楽しい」が着実に減少していっている。小3の94.2%から中3の79.2%へと減っている。
○男子女子で比較すると、「楽しい」「まあまあ楽しい」合わせた割合が、小3〜小5では女子が高く、小6で逆転し、中2、中3では男子が高い。逆に「楽しくない」「あまり楽しくない」を見てみても、小3〜小5で男子が楽しくない率が高く、小5で逆転して、中2、中3では女子が高い。
 小6と中2、中3では、女子の方が学校嫌いが多くなるとも受け取れるが、しかし「楽しい」という回答だけを見ると、どの学年でも女子が高くなっている。男子は「まあまあ楽しい」という回答が多くなっている。女子の方が、学校の楽しさについては、二極分化している傾向があるということになろう。また、これらのことは、男子、女子の発達の時期のずれや発達の特徴を示しているのかもしれない。
○「楽しくない」「あまり楽しくない」を合わせた率が、小3から中1までは漸増であるが、中2、中3で急激に増加している。10.9%から19.7%への増加で、5人に1人の割合で、学校が楽しくないと思っていることになる。高校受験への圧迫感が、学校生活の楽しさにはっきりとマイナスの影響を与えているといえよう。
 
問2「問1で『楽しい』『まあまあ楽しい』と答えた人で、それはなぜですか。
問3「問1で『楽しくない』『あまり楽しくない』と答えた人、それはなぜですか」
○「授業がわかる」という理由で学校を楽しいと思っている子どもの率は、小学校の段階から低いが、さらになかみを見てみると、小3で18.1%あったものが学年とともに減少し、中2では5.1%まで減っている。中3では、受験勉強のためか、少し持ち直して8.0%に回復している。
○他方、学校が楽しくない理由に「授業がわからない」をあげた子の割合は高く、小学校全体で44.2%、中学校全体で36.9%となっている。学年別に見ると、小学校では予想を覆えして、小3が一番高く57.6%で、以下減少していき、小6では34.3%となっている。中学校では少し増えるものの、小3の割合には遠く及ばない。なぜこうなるのであろうか。
 小3では、小数、分数が出てくるなど、学習内容の問題があげられよう。また、それまでの生活科がなくなり、理科、社会科という内容の教科が入ってきて、どのような学習をするのかということに戸惑いがあるとも推測できる。3年の学習のあり方の問題、生活科からの移行の問題が課題として浮かびあがる。
○「友だちがいる」を学校が楽しい理由としてあげている子の割合は、小3ですでに80.3%と高いが、学年進行とともに着実に増加し、中3では92.3%にまでなっている。いずれもトップである。
 男女を比較してみると、小4までは男子の方に「友だちがいる」という理由をあげる子が多いが、小5から逆転し、中3の女子では95.3%にものぼる女子が、この理由をあげている。男女ともに高いこの数値を「人間関係を大切にしたい」という人間的欲求の表現として受け止める必要があるが、この女子の高さを、男子と比べて何を要因として考えればよいのか、検討する価値があろう。
○「先生が好き」ということを学校が楽しい理由にあげる子の割合は、小3の21.9%から学年進行とともに減少し、中学校では3%台へと減っているが、特に小6の7.9%から中1の3.3%への減少が急激である。クラス担任制の小学校から、教科担任制の中学校への移行が影響しているのか、さらにそのことによって、教師との人間的結び付きの強さの点では、小学校とくらべて中学校では弱くなっているということを反映しているとも読むことができよう。
 さらに次の問3の、学校が楽しくないという理由に「先生が嫌い」ということをあげている子どもの割合を合わせて見てみると興味深い。この理由をあげている子どもは、小学校全体の31.4%から中学校全体では43.2%へと増えているが、特に、中1の50.2%が目だって多くなっている。教科担任制になじめない、あるいは授業を多くの教師から受けることが、その中に自分の気持ちに合わない教師がいるということで、マイナスに作用してしまっていることが考えられる。
○小3〜5では、「先生が好き」「先生が嫌い」がともに、女子があげる率が高くなっており、この年齢の女子の人間に対する好き嫌いの激しさという特性が表れている。
○学校が楽しい、楽しくないという理由にクラブをあげた割合は、楽しい理由、楽しくない理由とも、中1がかなり多くなっており、中学1年生は学校生活での大きな比重がクラブにかかっている(生きがいでもあり、逆に苦痛にもなる)ということがいえる。特に中1の男子は、クラブに学校が楽しい理由を求める割合が高い。中2になると減少し、中3になると、引退ということもあって(調査の時期が11〜12月)極端にクラブへの関心度が低くなっている。
 
 
問4「このごろ学校を休みたいと思うことがありますか」
○「よくある」の答えは、小学校では特に学年進行による増加は認められないが、中学校では、2年3年と急増しており、3年生では11.95%にまでなっている。
○「よくある」「たまにある」を合わせた数を見てみると、小3の32.4%から学年ごとに着実に増加し、中3では実に50.8%の生徒が休みたいと思っている。二人に一人が休みたいと思っているということになる。高校受験の圧迫感が根源的理由と考えられよう。
○男女の違いについては、小学校の段階では特に認められないが、中2、中3で「よくある」「たまにある」の答えの割合が、男子より女子にかなり高くなっている。中3の女子では、56.8%にまでなっている。(男子45.1%
○ここで「学校を休みたいと思うことがよくある」と答えた子ども達は、不登校の予備軍でもあるが、もう一方で不登校の子どもはこのアンケートに回答する場にはいなかったであろうことを考えると、実態としてはこの数値がもっと高くなると考えなければならない。
 
問5「どんなことで休みたいと思いますか」
○休みたいと思う理由として「友だちのことで」をあげた子の割合をみると、小学校の方がかなり高くなっており、また小学校でも学年が低い方が高くなる傾向にあり、小3では、17.7%になっている。男女の違いも顕著で、女子が男子の2倍を上回る率でこの理由を上げており、特に小6では、男子6.8%に対して女子は20.9%と高率を示している。また、中学校でも女子が男子よりこの理由をあげる割合がかなり高くなっており、顕著な特徴を示している。
 小6の女子では、休みたいと思う子のなか5人に1人は友だちのことをはっきりと理由にあげていることになり、圧倒的に多い「なんとなく」という答えの中にもこの理由が何らかの要素で入っていると考えられるから、「小学校高学年では、またその中でも女子は特に、友だち関係に神経を使っている」ということが明らかになっている。
○学校を休みたい理由として「勉強のことで」をあげている子の割合は、小学校3年生で一番高い率となっている。さきに問1、問3の答えで学校が楽しくない理由として「授業がわからない」という理由をあげる子がやはり小3で多かったことと符合している。小3で勉強がわからなくなる、そしてそれが理由で学校がつまらなくなるという図が一定示されており、なぜ小3で勉強がわからなくなるのか、その原因を分析することが大きな課題である。
 またもう一つの傾向として、学校を休みたい理由として「勉強」をあげる子の率は、小学校で男子の方が女子より割合が高く、中学校で女子の方が高くなっている。特に小3、小4では、女子に比べて男子がかなり高率でこの理由をあげている。
 これは、広く問題になっている10歳の壁の問題とかかわりがあろう。女子に比べて男子の成長が肉体面だけでなく精神面でも遅い傾向があり、論理的抽象的思考の力の発達の男女の落差が現われていると推測される。多くの教師が指摘している「小学校で『稚い』男子が多い」ということと一致するだろう。小3、小4では、このような知的発達の落差がある子ども達が同じクラスにいるということを十分に考慮に入れる必要があろうし、さらにこの学年で生活科から理科、社会科に移行することや、小数分数が入ってくるということもあり、「授業がわからない」という子どもをつくらないために、多くの工夫が必要になろう。この意味で、小3、小4はポイントになる学年といえよう。
 また中学校で、学校を休みたい理由として勉強のことをあげる子の割合が意外に少ないという数字が出ているが、これは、この学年になると授業がわかるようになる、楽しくなると解するよりも、中学校にもなると「勉強がわからない」ということが直接の理由になるという段階を越えており、授業がわからないことから派生する学校に消極的になる他の要因として直接的には意識されていると受け止めるべきであろう。
○「先生のことで」を理由に学校に行きたくないとしている子の割合は、他の理由に比べてかなり低くなっており、また学年による特徴もさほど認められないが、小6以上で、男子より女子がこの理由をあげる率が高く、先にあげた友だち関係の問題でも指摘したように、女子の人間関係への神経質さが現われていると考えられる。
○クラブを理由にあげている子の割合は、予想されるより低くなっている。中1で一番高く、以後段々下がっているが、これは、中学1年生はクラブ活動に期待して入学してくることもあり、クラブ活動に熱をいれている度合を逆に表わしているとも考えられる。中3でこの項目が極度に低いのは、調査された12月には既にクラブを引退してしまっているからであろう。
○「何となく」という理由が約50%と、圧倒的に多い。生活全体に「何となく何もしたくない」という感じが影響を与えていることも考えられるし、何となく学校がうっとうしいという感じを持っている子も多いと思われる。これらの倦怠感や消極性や学校への嫌悪の感情などの形成される構造を分析することの必要性が示されている。
 
2 「いじめ」に対する意識
 
問6「今年(1月から)、いじめられたことがありますか」
○いじめられた経験をあげている者の割合は、小3の32.7%から中3の6.1%へと学年進行で減少していっている。また、男女を比べてみると、どの学年でも男子の数値が高くなっている。特に小3の男子は、36.0%が、いじめられた経験を回答している。
 また、ついでに問7の「いじめを見たことがあるか」に対する答えも、同様の傾向を示している。
 しかしこの数値は、学年によって、どの範囲を「いじめ」と見るかという受け止め方の違いもあろうし、年齢による人間関係のもちかたの特徴ということも背景に解釈しなければならないであろう。すなわち、かなりの数の仲間と群れをつくって付き合う小学校の中・高学年と、数少ない親友にしぼって付き合い始める中学生とでは、「いじめ」の受け止め方も違うし「いじめ」の質も違うであろう。
 小学校での「いじめ」は、かなりの人数の中での仲間はずし的な「いじめ」が多いと考えられ、その標的(被害者)も次々と変わっていくと考えられるから、小学校で「いじめ」経験、目撃経験が多いのもうなずける。
 これに対して、中学校では、グループ関係を結んだ少数者の中での固定化した「いじめ」や、クラスの中でも固定化し長期化した「いじめ」など、深刻な「いじめ」が多いと考えられる。これらを背景に、数字を読む必要がある。
 
問7「いじめられた時どうしましたか」
○「反発した」という答えには、有意の学年差は認められない。男女の差は特徴としてあげられる。すなわち、男子に比べて女子は「反発した」と答えた者の率がかなり低くなっている。
 中3は、他の学年に比べて反発したという者の割合が全体にかなり低くなっており、その中でもその女子は、5.35%と反発するという対応をとる割合が低くなっている。「大人」になってきていると考えるべきか。いずれにしても、考えるべき特徴であろう。
○「黙っていた」という反応は、「反発した」という反応と裏腹の関係にあると考えられるが、やはり中3でこう答えた者が多くなっており、前のこととも符合する。
 しかし、男女の比較では、女子は「反発した」という反応が少なかったにもかかわらず、「黙っていた」という回答も、男子より低くなっている。「黙っていた」ということの解釈が、「その場面で黙っていた」と受け止めたか、「いじめを受けても、他の人に言わなかったか」と受け止めたかによって違うと思われるが、以下の先生、友だち、家族に相談したという回答の割合が、男子に比べて女子がかなり高くなっていることを考えると、後者の意味に解釈して、誰か他の人に相談したという回答を選んだものと考えられる。
 このことでいえば、男子は、他の人に相談したと回答した者の割合が女子よりかなり低くなっており、このあたりに、男女の周りの者の目に対する感覚の違い、「人間としての誇りの感覚」「プライド感覚」の違いといったものが表れている。
○「学級の問題にした」という回答は極度に少なく、子どもが自分からそういう問題を持ち出すという場に学級はなっていないということであろう。他人の目を気にするという子ども達の傾向からいえば、当然のことかもしれない。
○「先生に相談した」という回答は、特に学年による特徴は認められないが、男女の比較では、いずれの学年も女子の方が高くなっている。男子は全体に先生に相談することが少なく、特に中3では7.0%と極度に低くなっている。高校受験を控えて、内申書の問題があるのかもしれない。
○「友だちに話した」という回答は、高学年になるほど、また中学校のほうが高くなっている。特に中学校の女子は40%ぐらいの者が友だちに話している。ここでも男子は、いじめられた経験を他人に話すことは、たとえ友だちであっても、大変低くなっている。
○「家族に相談した」は、各学年でそう差はなく、およそ25%がそう答えている。ここでも、男子の相談する率が女子よりかなり低く、特に中3では、女子の29.8%が相談しているのに、男子では5.3%にとどまっている。
 
問8「今年(1月から)、いじめの場面を見たことがありますか」
○これへの回答も、「いじめられたことがありますか」への回答と同じ傾向を示しており、学年進行とともに減っているが、この数字の解釈についても、年齢による「何がいじめか」のとらえ方の違い、「いじめ」の質の違いを考慮して読み取る必要があろう。
 
問9「(いじめを見たとき)どうしましたか」
○「見ていた」という答えは、すでに小3で40.1%にのぼっているが、その後学年進行で増え続け、中3では、65.5%が「見ていた」と答えている。これも年齢による「いじめ」の質の違いを考慮に入れながら考えていくべき数字である。
○「見ていた」の回答の男女の比較では、小学校では男子が「見ていた」と答えた率が高く、中学校では、どちらかというと女子の方が「見ていた」という答えが高くなっている。他の項目への回答を見ながら、この「見ていた」のなかみを考えてみると、後に誰かに相談するという内容の「見ていた」とは言えないようである。
○「一緒にした」の回答は、他学年ではおよそ1割前後であるが、小6、中1で突出しており、それぞれ15.5%14.1%になっている。
○「注意した」という対応は、中学校では20%ぐらいまでにとどまっているが、小学校では50%近くにのぼっており、低学年ほど高くなっている。小3、小4では「注意した」が最も多く、それ以降は「見ていた」が最も多くなっている。
 もちろんこれも、年齢による「いじめ」の質の違いがあり、「注意できるようないじめであるか」という構造的問題があるので、これによって正義感が強いかどうかという一方的判断は控えるべきかもしれないが、小学生の良さとしてはとらえて良いと思われる。
○「先生に相談した」という答えは、小3では21.6%あったものが学年進行とともに減少し、中3では2.8%にまで下がっている。また、全体に男子の方が低くなっているが、特に中学校の男子に先生に相談する率が低い。先生に相談するとかえって、またひどくいじめられるといった、子どもなりの経験に基づく判断がそこにはあると考えられる。
○「学級の問題にした」という回答は、小6で7.8%となっているが、他の学年では1〜3%である。
○「家族に相談した」は、中3で極度に低い3.8%になっている。他も全体に低く、10%にとどいていない。男女の比較では、女子が家族に相談する割合が高くなっており、中3の男子では、「いじめを見た」と答えた189人のうち、家族に相談したのはわずか1人という数字が出ている。「いじめ」を見たぐらいで家族に相談することを考えるなどということは、ほとんどないということになる。
 
問10「イラついたり、ムカついたりしたことがありますか」
○「よくある」という回答率も、「たまにある」を含めた回答率も、小3から増えて小6で一度ピークになり、また下がってから中3で最高になっている。これは、校内では、最上の学年で責任を持たされることが多いということが、マイナス面に出て「いらつく」ことになるということも考えられるし、卒業して次に進むその見通しの不安ということが「イラつく、ムカつく」につながっているとも考えられる。
○イラつく、ムカつくことが「よくある」「たまにある」を合わせた回答でみた男女比較では、小3を除いて、女子に高い回答率が出ている。その男女差は、中学校でより大きくなっており、中3では男子で「よくある」と答えているのが20.2%に対して女子は27.9%であり、「たまにある」を合わせると、男子56.6%に対して女子では実に74.7%が「イラつく、ムカつく」ことがあると答えている。
 この男女の違いは、どこから来るのか、男子と女子の社会のなかでの立場の違い、家庭や学校での男子、女子の取り扱いや期待度の違いなどが、ここに反映されているのであろうと思われる。様々な角度からの分析が求められる。
 
問11「どんな時に、イラついたり、ムカついたりするか」(自由記述)
 
3 学校への要望
 
問12「学校や先生に要望したいことがありますか」
○要望があると答えた子の割合は、学年進行とともに多くなっており、全体としては小学校の48.1%より中学校では64.7%と、かなり高くなっている。急激に高くなっているのは、小6から中1へ、小5から小6へ、である。この年齢は、子ども達に社会を見る目が育ち、自分で判断を下したいという欲求が育ち、自己主張を強く持ち始める時期であることを考えると、この数字はうなずけるものである。また、小学校と中学校の違いによるとまどいも、ここに表れているのかもしれない。
○また、小5から上では、女子の方が男子より要望があると思っている割合が高くなっており、特に中学校では、女子の方がかなり高い率で学校への要望をもっている。
 
問13「(要望がある人は)それはどんなことですか」
○この項目は、要望がある人に聞いており、要望がない子も小学校では50%、中学校では33%ほどいたので、以下の分析での数値は、全体の中での割合ではない。全体の中での割合を思い浮かべるには、その数値を半分にして考えればよいだろう。
 しかし、要望することがないと答えた子も、潜在的には要望を持っているであろうし、思いつかないだけということもあろう。全く学校に満足しているとは考えにくい。そのあたりも含んで考えていく必要があろう。
○要望の内容については、小学生は「昼休みを長くしてほしい」が67.6%と最も多く、次いで「校則をゆるめてもっと自由に」が39.4%となっている。中学生では「校則をゆるめてもっと自由に」が52.2%とトップで、次いで「分かるように教えてほしい」が39.0%、「もっと生徒の意見を聞いて」が35.1%、「成績だけで評価しないで」34.5%となっている。
○要望として「もっとゆっくり分かるように教えてほしい」と思っている子どもの率は、小学校では20%前後になっているのに対して、中学校では、40%前後と、かなり高くなっている。特に中2、中3で高い数値になっている。高校受験をひかえての切実な声であろう。
 また、小学校の中でみると、5、6年より3、4年に、「分かるように教えて」という訴えが多い。前の問3で、授業が分からないと答えた子どもの割合が小3に多いということを指摘して、考察したが、ここでも「分かるように教えてほしい」という要望の形で、授業が分かりにくくなっているこの学年の問題が表われている。
○「成績だけで人を評価しないでほしい」という回答は、やはり中学校で高く(全体として小学校11.1%、中学校34.5%)、特に中3では39.4%にのぼっている。受験が近くなることによる成績による評価の先行という原因とともに、小学校では学級担任制により子ども一人一人と長く向き合うことができるのに対して、教科担任制の中学校では、時々の授業の時間内でしか教師と生徒の接触がなく、どうしても教科の成績が人を見る尺度の中心になってしまうということもあるだろう。また、中2、中3では、女子の方にこの要求を持つ傾向が強く出ている。
○「体罰、みせしめ、いやみ、ひにくをやめて」「生徒をばかにしないでほしい」という要望項目に答えた者の割合は同じ傾向を示しているので、一緒にコメントすることにする。数値は、学年進行とともに高くなり、中3ではそれぞれの項目24.5%25.4%になっている。中学校では何人もの教師と接するのでその中にそういう対応をする教師がいる率が高いということもいえるであろうし、子どもの発達の要因としては、人を見る目の成長、人間としての誇りの感覚の高まり、人権意識の高まりもこの数字に影響しているであろう。数値に顕著な男女差はみられない。
○「もっと生徒の意見を聞いてほしい」への回答率も同じ傾向で、学年進行とともに高まり、小学校では、20%であったのが、中3では39.9%になっている。この項目では男女差が認められ、中学校で女子の方が10%ほど高い率を示している。中学生は、またその女子は特に、もっと意見を聞いて欲しいという要求をもっているということが分かる。今後の学校の在り方、教師の在り方を考えていく材料になろう。
○「校則をゆるめて、もっと自由にしてほしい」と答えた子の割合は、小学校では学年とともに多くなり小6で48.5%となっており、中学校では中1の56.1%から徐々に減っていく傾向を示している。
 中1で最も高い数値になっているということは、小学校から中学校へ入って、子どもをしばる規則が急に多くなるということがあろう。それによる閉塞感が原因として考えられよう。小学校から中学校への移行時の問題が、もっと真剣に考えられるべきであろう。中2、中3と進むと数値が低くなっていくのは、慣れによって不満が意識上抑えられるからであろう。
 小学校でも全体として40%と、この項目に回答する子どもが多いことに驚かされるが、中学校と多少違って、校則というよりは「学校にあれを持ってきてはいけない、これを持ってきてはいけない」という諸注意が多いことから、こういう回答数になると思われる。子どもは、それに対してかなり不満を持っていることがこの数からうかがえよう。
○「もっと厳しく指導してほしい」という回答は、全体としてはかなり低いが、学年が低いほど高く、小3で8.5%の数値を示しているのが気になるところである。授業の進行を妨げ、クラスを乱す子の存在にたいする教師の対応への不満がこの中に含まれているとも考えられる。また、この年齢に特有の画一的な正義感平等感がこの裏に存在することも推測できる。
○圧倒的多数の小学生が「もっと休み時間を増やしてほしい」と答えている。低学年になるほど、また男子の方が、この要求が強い。ある意味では、子どもの健全さを示すものとして、ホッとさせる数字としても受け止められるのではないか。
○クラブ活動を少なくしてほしいと思っている中学生は、中1で多く、23.2%である。逆に「増やしてほしい」も中1で最も多く、17.5%である。先にも分析したように、中1で最もクラブ活動に熱が入るということの裏腹の関係で、それへの不満も出てくるということであろう。
 
問14「授業について思っていること」(自由記述)
 
問15「中学卒業時に進路を決めなければならないことについて」
○分からないと答えた中学生が一番多く(37.5%)、ついで「ちょうど良い」32/1%となり、早すぎる18.9%となっている。意識して、こういう問題としてとらえて考えたことがないことにもよるだろう。
 
問16 後にまわす
 
4 自分をみつめる目
 
問17「あなたのことについての質問です」
問17ー(1)「自分の正直な気持ちを言える友達がいますか」
○「ある」という答えは、小3で70.8%、以降学年がすすむとともに増えていき、中2、中3では82%になっている。また、各学年、男子よりも女子の方がかなり高くなっている。話を聞いてもらいたい友だちを求めるという欲求そのものの強さが学年、男女で異なっていることも背景にあるだろう。
 
問17ー(2)「友達にどう見られ、どう思われているかいつも気にしていますか」
○気にしているのは、小学生で28.7%、中学生で32.7%と、それほど大きな差はない。小3ですでに29%の子がいつも友達の目を気にしていると答えている。
 また、男女差はかなり顕著に表われており、気にしている率は、どの学年でも女子のほうが少なくとも10%以上高くなっている。
 
問17ー(3)「友達によくないことをさそわれたり、たのまれたときに断われますか」
○どの学年も、断われると答えた子の割合が5060%にのぼっている。断われないと答えた子は、大体10%ぐらいである。しかし「分からない」と答えた子の割合も高く、小学校32.6%、中学校37.5%となっている。
 この「わからない」の数字が大変気になる数字で、場合によっては断われないことがあるかもしれないということを予測していると考えられるから、そこには人間関係の難しさ、そして自分の人間関係の力への自信のなさが表われているのではないだろうか。子どもは自分をとりまく友達関係の難しさを感じ取っていると思われる。
 
問17ー(4)「自分のことを好きですか」
○「好き」と答えた者の数も「まあまあ好き」を入れた数も、学年進行とともに減少している。小6と中2、中3では「好き」「まあまあ好き」合わせても50%をわっている。特に急激に減っているのが、小5から小6への減少である。また男女の比較では、女子が自分を好きでない傾向がかなり強いことが出ている。
 また中3では、「あまり好きでない」「嫌い」を合わせると、29.7%にものぼっている。特に中3の女子は、35.7%にも達している。なかなか自分を前向きにとらえられない傾向が出ているといえる。何重にも自分を見つめる力がついてくる年齢の特徴であろうが、それが後ろ向きに働いてしまっているところが見受けられる。後に出てくる、今後の自分の見通しが見えるかということともかかわって、分析してみたい。
 また、女子の数字が高いこと、女子が自分を肯定的にとらえられないことは、この年代の女子は接し方が難しいと言われていることと結び付いていると思われる。周りの者の見る目が、子どもの自分を見る見方に大きな影響を与えることを考えると、女性の社会における地位の問題、女の子の家庭、学校での接され方の問題などと関連させて考察する必要がある大きな問題であろう。
 
問17ー(5)「自分なんか生まれてこなかった方がよかったという気持ちになること       がありますか」
○「よくある」「ときどきある」を合わせると、どの学年でも30%強の子どもがあると答えており、一番高いのが中3で、38.4%となっている。またこの項目においても、女子の方がかなり高く、女子が自分を前向きにとらえることができない傾向を強くもっていることが数字として表れている。
 
問17ー(6)「毎日がつまらなく、むなしいという気持ちになることがありますか」
○「ある」と答えた中学生は、中1、中2、中3と多くなっている。「よくある」「ときどきある」を合わせた数字でいくと、中1でも47.1%、中3になると61.8%にのぼっている。受験に追われることによる学校生活、また生活全体のつまらなさが募り、自分を受験勉強においやりながらも、時にむなしい気持ちに襲われる中学生が多いと思われる。人生のことを真剣に考え始めるこの年齢からいえば、当然のことであり、この状況を満足して受け入れることができない中学生の姿は、むしろ健全なものであろう。
 
問17ー(7)「自分にとって自信のあることがありますか」
○学年があがるにしたがって「自分に自信があることがある」と答える子の数は減ってくる傾向にある。小5では「ほとんどない」と答える子が14.5%であるが、中3ではそう答える生徒が32.4%になっている。男女比較では女子の自信のなさが大きく上回っており、中3の女子にいたっては40.4%の者が自信のあることが「ほとんどない」と答えている。
 
5 自己形成の過程でどのような経験をしてきているか
 
問18「あなた自身の経験についての質問です」
問18ー(1)「親や先生に自分のことを分かってもらえて、うれしかったことがあり       ますか」
○「よくある」「少しある」を合わせた数字でいうと、小学校では80%前後、中学校で70%前後の子がそういう経験があると答えている。「ほとんどない」という答えは、学年進行にともなって増え、中3で32.8%となっている。この数字はやはり高い数字ととらえられるであろう。これに対して「よくある」は14.1%にすぎない。確かにこの年ごろの子は自己の内面を周りから見えない場所でふくらませていくという特徴をもっており、それをわかることは難しいのは確かだが、それを考えてもこの数字は、子どもをとりまく人間関係の潤いのなさ、子どもの心に寄り添えていない大人の姿を示す数でもあろう。
 
問18ー(2)「友だちに自分のことを分かってもらえて、うれしかったことがありま       すか」
○小学生では、前問の親や先生に分かってもらえたという経験とほぼ同じ数になっているが、中学生においては、親や教師と比べて、友だちに分かってもらった経験の方が圧倒的に高くなっており、中学全体でも「よくある」「少しある」を合わせると83.6%にものぼっている。親、教師よりも友だちに目が向いていく時期という特徴が出ている。
 また、女子の方が男子より「よくある」体験が多くなっている。
 
問18ー(3)「友だちどうしで考えを出し合って何かを決めたり計画したことがあり       ますか」
○この項目については、ほとんど学年差はなく、「よくある」「少しある」合わせて85%前後の数になっている。
 気になるのは男女差で、集団的に取り組んだ経験は男子よりも女子の方がかなり高いという数字が出ている。同じ経験をしても、男子はそれを集団的取り組みと認識しない傾向があるのだろうか。
 
問18−(4)「自分の力で、何かをつくりあげてうれしかったことがありますか」
○「よくある」という答えが、小学校では41.1%あるが、中学校では30.0%に減少している。逆に「ほとんどない」は中学校で増えており、中3で16.8%と最高値になっている。また、男子の方が女子より多くなっている。
 
問18ー(5)「小説を読んだり、音楽を聞いたり、景色をみたりして感動したことが       ありますか」
○この質問項目に「よくある」「少しある」と答えた子どもの割合は、小3、小4と中3では90%前後と高くなっているが、小5、小6、中1、中2での多少の落ち込み(70〜80%)が気になるところである。
 小3、小4での素直な感動と、中3での自己主張による好みの固まった上での感動の間に挟まれた揺れ動きの時期、自分を作る模索の時期の落ち込みと考えることもできよう。
 この項目での男女差は大きく、感動体験の高い女子と低い男子という対比が浮き上がってくる。各学年でかなりの数字の開きがある。感動経験が殆どないという回答で逆に見てみると、男子と女子の間には10%から20%の開きがある。小学校3、4年生の女子では95%が感動経験を回答し、中3の女子も85%を越える感動体験を回答している。
 しかし、全体として小学校で80.1%の子どもが、中学校でも80.7%の子どもが、何らかの感動体験を回答しているということは、積極的に評価し、教育実践の拠り所としていってよいであろう。
 
 6 仲間・グループについての意識
 
問19「あなたが、いつも行動を共にする仲間・グループがありますか」
○小学生では82%が、中学生では92.2%が「ある」と答えており、仲間を持つ者が多いという当然の結果が出ている。他方で「ない」と答えた者が、小学生で16.9%、中学生で7.9%あり、この数字を高いと考えるかどうかは検討を要するが、とにかく気になる数字ではある。学年による特別な特徴はみうけられない。
 男女の比較においては、顕著な特徴が出ている。どの学年においても10%近くの差をもって、女子の方が仲間・グループを持つ割合が高くなっている。中学生の女子は、実に95.1%が「ある」と答えている。仲間関係の中で生きるという人間としての力を育てる時期であるという捉え方と同時に、仲間がいないと不安であるという不安定な心理の表れとしても捉える必要がある。人間関係に振り回されるという現代社会の不安定な人間の在り方を見直すきっかけともなる数字でもあろう。
 
問20ー(1)「言いたいことが言えて、本音でつきあえる仲間・グループだと思いま       すか」
○本音でつきあえる仲間であるという答えをした者が、小学生で47.2%、中学生で47.0%おり、また「少し思う」を加えると、小、中学生とも93%の者が本音でつきあえると思っているという結果が出ている。そして、本音でつきあえると思っている者の割合は、どの学年でも女子の方が男子よりも高くなっている。このことは逆に考えると、本音を言える者で集まり、その他の者を排除する傾向が強いということも考えられる。
 
問20ー(2)「困ったとき自分を守ってくれる仲間・グループだと思いますか」
○どの学年でも「とても思う」が40%を越え、「少し思う」を加えると、90%前後の者がそう思うと答えている。「思わない」も小、中学校とも10%はいる。
 この項目においても、女子がグループを信頼している割合が男子よりもはっきりと高くなっており、上の質問とも合わせて考えると、女子にグループにたいする依存度が高いということがいえよう。
 
問20ー(3)「一緒にいるだけで。なんとなくホッとする仲間・グループだと思いま       すか」
○「とても思う」の答えは、小、中学校ともに55%を越え、「少し思う」を加えると、93%近くにのぼっている。ここでも中2を除いて、他のすべての学年で、女子がホッとする仲間だと思っている割合が高い。小学校の男子に「思わない」と答えた子の割合が、比較の上で高くなっている。
 しかしこの項目については、グループがホッとするような居やすいグループであるということを意味する回答であるのか、グループに属するということでホッとするという意味内容なのかを考えてみなければならないし、推測でいうと、後者ではないかという予想が成り立つのではないだろうか。
 
問20ー(4)「学力や能力で差別されない仲間・グループだと思いますか」
○「とても思う」の数値も、「少し思う」を含めての数値も、学年進行とともに高くなっていく。「とても思う」が、小3では36.1%で、中3になると65.8%になっている。特に小3は、学力で差別されないグループだと思わないと、はっきり答えている者が34.6%いる。これは、小学生がグループを組む場合には、人間を選ぶというより、偶然の要素で選ぶことが多く、多様な者がグループにいるが、中学生になると、学力的にも同じぐらいの者がグループを組み、お互いに学力の点でも思いを共有するということになるからだと思われる。小学生では、グループ内でのリーダーシップは学力の要素で決められる傾向が強く、中学校ではその他の要素で決められることが多いということでもあるだろう。
 
問20ー(5)「自分の興味や関心を深めることができるグループだと思いますか」
○どの学年も「とても思う」「少し思う」合わせると、90%ぐらいの者がそう思うと答えている。中学生になると「とても思う」が高くなり、趣味的なつながりという要素が高いことがわかる。
 
問21「あなたは今の仲間・グループに満足していますか」
○この項目の調査対象は中学生のみであるが、60.9%が「十分満足している」と答え、「少し満足している」を含めると、91.8%の中学生が満足を感じていることになる。「満足していない」「他のグループへ行きたい」は、合わせても 6%である。「十分満足している」という答えは、男子より女子の方が少し高くなっている。
 
問22「あなたは、さみしそうにしている仲間のことをきづかったり、仲間の出番をつ    くったことはありますか」
○小学生では、「よくある」と答えた子が、小3の32.9%から小6の19.7%に漸減し、中学校では1920%に落ち着いている。「少しある」を加えると、小学生では87.8%が、中学生では82.8%が「ある」と答えている。また、男子に比べ女子の方が「よくある」と多く答えている。
 小学生の方が、仲間へのやさしい気配りをしていると考えられるが、中学生でも8割を越える子は、そのような心を潜在的にもっているということは、注目すべきであり、教育的働きかけの拠り所となろう。
 また、小学校3年生について、これまでのところで「授業がつまらなくなる」などの特徴的学年として分析してきたが、仲間への気づかいなど、純粋なやさしさを失っていない学年でもあるということを同時におさえておく必要があろう。
 
7 家族、教師に対する意識
 
問23「あなたは、親からどういうことを期待されていると思いますか」(2つまで)
○小学生も中学生も、トップにあげているのが「やさしい人間になること」である。小学生48.3%、中学生41.6%。親の健全な期待の在り方の反映であろう。また、次に高いのが「勉強ができてよい高校、大学へ行くこと」となっており、小学生32.5%、中学生31.6%となっている。中3で33.2%と多少高くなっていることは予測がつくが、小3で一番高く、44.5%という数字が出ており、これを勉強への意識の高まる時期あるいは親の期待などの現実的側面に気付いていく年齢であるととらえるべきか、あるいは親の期待に応えたいという意識を強く持っているととらえるべきか、多面的考察が必要であろう。
 また、この二つの項目への応え方に、男女の特徴が明確に表われている。全ての学年で、「やさしい人間になることを期待されている」という答えは女子が多く、「よい学校に進学するという期待」は男子に多いというはっきりした差が出ている。男子、女子による周囲の者の接し方の違いが、子どもの意識の上でも表われ、自分をとらえる時の枠組みを形成していると考えられる。
 「スポーツや音楽などで能力を伸ばすこと」への回答率は、低学年ほど高く、小3で27.1%であったものが、中3では12.2%に減っている。子どもも夢を持ち、親も期待をかける年齢から、親も子も現実的に限界を知っていくという過程がこの数値に表れているのだろう。
 「特に親に期待されていない」と答えた子が、小学校で14.9%、中学校で23.0%いることは気になるところである。すでに小6で23.2%になっている。小学校では、男子にこう答える子が多く、中学校では女子にこの答えが多くなっている。将来の進路の決定時期に近くなるとともに現実的になるにしても、それが「期待されていない」という意識を持たせることになってしまうという親子関係は、問題として考える必要があろう。
 
問24「あなたはどんな大人になりたいですか」(2つまで)
○小学生では、「家族を大切にする人」が63.9%と圧倒的に多く(低学年ほど多い)、あたたかい家族の人間関係を求める欲求がここに表れている。中学生でも48.4%がこれを選択している。また、男女比較では、女子がこの項目を選ぶ率が男子よりかなり上回っている。
 2位以下が、小学校と中学校ではかなり異なっている。小学校では、2位が「人を助ける人」30.9%になっており、これも女子の方が高率でこう答えている。小学校ではさらに3位が「収入の多い人」25.8%(この項目への回答は、男子が2倍以上女子より高い)、4位は「尊敬される人」18.9%と続いている。
 中学校では、2位が「尊敬される人」であり、理想、理念に対する理解、あこがれが高くなり、それに支えられて行動することが多くなる中学生の時期の特徴を表わしているだろう。3位が「収入の多い人」27.6%(男子が圧倒的に高い回答率を示す)、4位「人を助ける人」24.5%(女子に回答率が高い)と続く。中3でも、「人を助ける人」「世の中のために働く人」を合わせると、38.5%にのぼり、「家族を大切にする人」への高率の回答とも合わせて考えると、「自己中心的でドライな若者」という人間像とは違う側面が浮かび上がってくる。
 
問25「あなたは父親をどう思いますか」「あなたは母親をどう思いますか」(3つまで)
○この項目の分析に入る前に、一つのことわりが必要である。この設問、また次の設問は、該当するもの全部の選択ではなく、「3つまで」の選択になっているために、回答率の低い項目でも、必ずしもそう思っていないと解釈することができないことがある。例えば、「私が困ったとき受け止めてくれる」の項目への回答数は少ないが、これはこう思っていないということでは必ずしもなく、該当する項目上位3番目までに入っていなかったというために回答数が少なかったとも考えられるということである。
○父親、母親とも、また小学生、中学生ともトップを占めているのが「やさしい」である。この「やさしい」について見ると、父親については、小学生60.9%に対して、中学生では44.6%とかなり減っている。母親についても、小学生67.7%で、中学生39.5%となっている。低学年ほど「やさしい」と思っている率が高く、小3では66.1%(父親)、73.8%(母親)がそう答え、中3では39.4%(父親)、39.5%(母親)に減っている。どの学年でも、女子に「父親、母親はやさしい」という思いが高い。小学生で「やさしい」と思う率は、母親に対してが父親に対してよりもかなり高いが、中学生ではほとんど差がなくなっている。
○小学生では、2位になっているのが「たよりになる」(父親、母親とも)である。低学年ほど高く、小3では44.5%(父親)、46.8%(母親)にもなるが、「たよりになる」親の像が小6あたりから急激に減少し始め、中学校では減り続け、中3では26%(父親)、22.8%(母親)にまで落ち込んで、順位も低くなっている。「たよりになる」親の像の転落は、子どものものを見る力の成長を逆に表してもいる。
 男女比較では、「たよりになる父親」像を持つのはどの学年も男子に高くなっているが、中学校では特に男女の数の隔たりが大きくなっている。中学生の女子が「たよりになる父親」像を持つ率が特に低くなっており、批判的な目を持つようになっていることを示している。また、「たよりになる母親」像は、小5までは男子に高く、以後は女子に高くなっている。
 この年齢の子どもは、論理的に考える力をつけ、それを振り回して理屈っぽくなり、大人の矛盾を突くようになる時期にある。女子の方が親の矛盾を鋭く意識することが多いのであろうし、また、女子の方が男子よりも早く大人になっていく傾向がある(男の子は中学生でも、かなり子どもっぽいところを持ち続ける)ことも、この数字の違いに表れてきていると考えられよう。特に女子は異性の父親に対する批判的な目を持つことが多いことが数字に出ている。
○中学生で2位にきているのが父親、母親とも「私のことを思っていてくれる」で、父親34.3%、母親41.5%になっている。この項目は小学生でも3位だが、30.1%(父親)、37.6%(母親)と多少低くなっている。中学生は考える力がつき、人間を見る目も育ってきているので、親に対してあれこれ批判的ではあるが、他方では、親は自分達のことを思ってくれているのだということは分かっているということになろう。親は自分のことを考えてくれているのだということは頭では分かっているのだが、個々の行動においてはどうしても、口答えし、反抗的態度をとってしまうという年ごろといえよう。この傾向は、小学生、中学生とも女子に強く出ている。
○父親を「こわい」ととらえている子どもは、小学生では25.6%いるが、中学生になると18.2%に減少する。特に小学3年生は、30.9%が「こわい」と思っている。母親に対しても同様な傾向を示しており、小3では26%の子が母親を「こわい」存在と回答しているのに対して、中3では10.6%に減っている。先に述べた、年齢があがるに伴って、親に対する批判的な目が育ってくるということの一つの表われであろう。
 また、父親を「こわい」と思う傾向は、どの学年でも男子に高くなっており、母親を「こわい」と思う傾向は、中1までは男子に高く、中2以後が女子に高くなっている。男の子と女の子への親の姿勢の違い、また年齢段階による子どもへの接し方の違いが反映されていると思われる。
○親が「私に期待している」と感じていると回答した子は、小学校9.6%(父親)、11%(母親)、中学校10.9%(父親)、14.8%(母親)と、いずれもかなり低い数字が出ている。学年による差はそれほどないが、女子よりも男子が「期待されている」と感じている割合が高く、中3の男子は12%(父親)、15.2%(母親)と高くなっている。受験という点での親の期待を感じているということであろう。期待が子どもを育てる面と、期待が子どもを押しつぶす面とがあるが、「期待されている」という子の数の少なさは、その期待の内容とともに検討する価値があるだろう。
○父親を「うるさい」と感じている子は、中学校になって急に多くなっており、約30%である。小学校5年以下では男子が、それ以上では女子が「うるさい」と感じる率が高い。母親についても「うるさい」と感じている子は、やはり中学校で急に増え34.9%となっている。親が「こわい」存在から「うるさい」存在に変わっていくというのは、親と対等の位置を獲得しつつある中学生の特質といえる。
 ここで面白いのは、小学生では父親を「うるさい」と感じる子の率のほうが高く、中学生では、母親を「うるさく」感じる子の率の方が高くなっていることである。中学生は特に母親を、口うるさいと感じている(男子女子とも)という結果が出ている。
○父親が「人生の先輩として相談できる」という回答は、小4までは20%近くあるが、小5から急に5%以下に落ち込み、横ばいとなる。父親が、人生の問題の相談相手としてはほとんど認められていないということになる。特に女子にこの項目への回答が低いのは、異性であるということから当然のことかもしれない。
これに対して、母親について「人生の先輩として相談できる」と答えた子は、小学校で20.5%と父親よりは大分高くなっているが、それは小3、小4でそれぞれ26.0%39.2%と高い数字になっているからであり、小5では7.5%と急に落ち込み、以降10%以下が続いている。思春期に入り、親から離れていくということが読み取れる。
○「私が困ったとき受け止めてくれる」という回答は、この設問の意味が具体的に理解しにくかったということもあると思われるが、父親、母親とも、また小学校、中学校とも低く、中1で母親が「受け止めてくれる」と答えた者が最高で、20.7%である。特に、中学生が父親を「受け止めてくれる」存在として見る率が低く、10%以下である。
 
問27「あなたは学校の先生をどう思いますか」(3つまで)
○小学生の回答でトップは「やさしい」であり、55.4%となっている。低学年ほど高く、小3では68.2%、また男子より女子の方が回答率が高く、最高の小3女子では76.8%にまでのぼっている。これに対して「こわい」は小学校全体で26.7%である。
○小学生に対して中学生では「やさしい」は30%と減り、順位も2位となっている。また、学年があがるにともない減っており、中3では23.2%となり、また中2、中3では、女子が先生を「やさしい」と思う率が男子を下回っているのも特徴である。
 中学生でトップになっているのは、先生は「うるさい」であり、40.5%になっている。小学生では、19.7%しかなかったのに比べると、急激な増加である。中学生は「こわい」が減っており、中3では、13%となっている。大人への反抗を特徴とする思春期の数字として読めるであろう。
○先生を「人生の先輩として相談できる」と答えている子どもは、小3、小4では30%前後と高い数であるが、小4から急激に減少し、以降5%前後を示すようになる。中3では、人生の選択期をむかえてか、数値は上がるが、それでも7.4%である。親についての項目でも「人生の先輩として相談できる」という項目への回答は、小3、小4で高く、以降が急に減っていることを考えると、小3、小4ぐらいまでは、まだ親や教師はたよりになる相談相手として認められているが、それ以降は、友達との人間関係が深まり、親、教師は、子どもにとっての相談相手としての地位を奪われることになるのであろう。親、教師の不十分さというより、むしろ発達としての健全さを示す数値として考えてもよいのではないだろうか。
○先生は「たよりになる」と答えた子の率は、小学校では33.9%で2位であるが、中学校では23.3%で3位になっている。やはり小3、小4で突出して高く40%前後を示し、その後減少して、中2、中3では21.6%にまで減少している。また中学生では、「たよりになる」と思わないのは女子に高くなっている。
○「私を信頼してくれている」「私のことを思ってくれている」「私が困ったときに受け止めてくれる」に対する回答は、いずれも低いが、これは必ずしもそう思っていないということではなく、この設問が「3つまで」の回答となっているために、これらの余り具体的場面を思い浮かべにくい項目は、上位3位までに入らなかったと考えるべきであろう。
 ただし、先生は「私のことを思ってくれていない」という項目への回答が、中学校では10%を少し越えているということは受け止めなければならないだろう。はっきりと「先生は私のことを思ってくれていない」という回答をした者がこれだけいるということは、潜在的にはもっと教師への不満が多いことが予想される。中学生では全体として、教師への消極的評価が積極的評価より強いという傾向を見受けることができる。
 
問16 「いま自分にとって、たよりになる人がいますか」(2つまで)
※この項目は、アンケート用紙ではもっと前に入っていたものであるが、分類からいって、ここが適切と考えた。
○回答率の高かった順位では、小学生も中学生も同じで、1位「友だち」、2位「親」、3位「兄弟」、4位「学校の先生」となっている。部分的に見ると、小3、小4までは、「親」が1位であるが、小5から急に「友だち」が逆転して、大きくトップに立つことになる。小学校、中学校で順位はほぼ同じであるが、その内容には大きな差があり、小学生では「友だち」64.1%、「親」60.1%と、余り差はないが、中学生では「友だち」72.2%、「親」45.0%となり、友だちが圧倒的に増え、親が減っている。中学生期における友だちの存在の大きさを知らされる数である。
○「親」と答えた数は、学年進行とともに着実に減少している。「友だち」という回答は、小学校では学年進行とともに増加しているが、中学校になると学年進行とともに逆に減少している。その分、中3では「学校の先生」「塾の先生」という回答が増加している。
○「学校の先生」という回答は、小学校3年の19.4%から学年進行とともに減少し、中2で最低の4.9%になり、中3では少し持ち直して、7.6%となっている。受験期の「たよりになる」存在の意味が出てきているのであろう。
○他方で、頼りになる人が「誰もいない」という回答も、小3の6.1%から学年進行とともに増え、中3では10.2%になっている。10人に1人の中学3年生が、「たよりになる人は誰もいない」と考えているということになる。孤立感を深める青年像が浮かんでくる。
○男女の比較でいえば、頼りになる人として「親」をあげている者は、女子に多くなっている。また、「友だち」をあげている者も、女子の方が多くなっており、特に中学生の女子は男子よりかなり高い数になっている。友だち関係に重きをおく姿を示す数だといえる。
 「学校の先生」をあげている者は、小3、小4までは女子が多く、それ以降では男子の方が多くなっている。「誰もいない」と回答した者は、どの学年でも男子の方が多くなっている。
○たよりになる人として「塾の先生」をあげている者も、小学校では2.2%、中学校では5.2%おり、塾の存在が一定の大きさをもっていることもうかがえる。特に中3では、8.7%の者が「塾の先生」と答えている。
 
 
8 子どものホッとできる居場所
 
問28「あなたがいま一番ホッとできる場所はどこですか」
○当然のことながら一番多い回答は「私の家」で、小学生の77.9%、中学生の75.3%がこれに回答している。また、この項目に回答を寄せた者の男女の比較では、女子が男子より少し上回っている。小学校4年から学年進行で、この項目への回答率は減っているが、小3の74.7%という低い数値が気になるところである。
○「学校」と答えた者は、小学生で4.6%、中学生で6.5%、「友達の家」と答えた者は、小学生で10.1%、中学生で8.9%であり、いずれも低くなっているが、男女の比較で面白い結果が出ている。つまり、「学校」という回答は小3を除いて全体に女子に多く、「友達の家」という回答は、中3を除いて全体に男子に多くなっている。学校でホッとするのは女子に多く、友達の家でホッとするのは男子に多いということになる。交友関係の持ち方の違いの表われとも見ることができよう。
○「塾」と答えた者は、小学生1.6%、中学生2.6%で、塾通いする子どもは多いが、やはりそこは居心地のいい場所ではないと感じているところが読み取れる。
○「どこにもない」という回答は、小学生2.8%、中学生3.9%となっているが、中学生では中3で5.4%と最高になっており、高校受験での不安感がどこでも癒されない子もいるという数値かもしれない。小学生では、小3の3.0%が一番高くなっている。
 
問29「あなたの家庭で、一番ホッとできる所はどこですか」
○小学生では、「私の部屋」という回答が48.4%、「居間」という回答が28.8%、中学生では、「私の部屋」が62.6%と圧倒的に多く、「居間」が20.9%となっている。小学生ではまだ居間で家族と接することを好む傾向があるが、中学生では自分の部屋にいることを好むようになるということが読み取れよう。
 しかし学年別に細かく見てみると、「私の部屋」という回答はおよそ学年進行とともに増えていくと見ることができるが、逆に「居間」という回答は、小学生では学年進行で少しずつではあるが増えていき、小6で最高を示し、中学生では急に減って、学年進行とともに減っていく数値になっている。思春期の入り口にある無意識の不安感が、家族のいる居間を好む傾向を作っているのであろうか。
○男女比較で見ると、「私の部屋」という答えは、小学生で女子の回答が多少高いということ以外、あまり特徴は見られないが、「居間」という回答は、どの学年でもかなりの差で女子の方が高くなっている。中3でその差は最も大きくなっている。女子の方に、「居間」を好む傾向が強いということになる。
 
問30「あなたの学校で、一番ホッとできる所はどこですか」
○「教室」という回答が小学校、中学校とも他を引き離して一番になっているが、小学生45.8%、中学生50.6%と、中学生で、より高くなっている。それだけ小学生は、他の場所を選ぶ率が高くなっており、小学生の活動性の高さを示しているのかもしれない。また、全体として、「教室」と答えた者は、男子よりも女子に多くなっており、小3でその差は特に大きくなっている。
○「保健室」という答えは、小学校ではどの学年でも15%前後と高くなっているが、中学校では7.6%である。中学校で見てみると、中3で11.1%と、中1、中2よりも2倍ほど高い数の者が、「保健室」と回答していることがわかる。心身の不安定期といえよう。また、どの学年でも男子よりも女子にこの回答を選ぶ者が多くなっている。
○「運動場」という回答は、小学生7.9%、中学生2.9%であり、またどの学年も圧倒的に男子が多くなっている。小学生の、また男子の活動性を示す数値といえよう。
○「廊下」「階段のベランダ」などの回答をする者も一定数おり、それらがたまり場的な場所になっていることも予想させる。
○「どこにもない」という回答は、学年進行で増えており、小学校で13.8%、中学校で16.8%となっているが、中3では特に高く、20.1%になっている。5人に一人の中学生が、学校でのホッとできる場所を持てないでいるということになる。また、男女比較でみると、小学校ではどの学年も男子が「どこにもない」と回答する率が高くなっているが、中学校では、男女の間に顕著な差はみられない。
 全体として、小学校では1位「教室」、2位「保健室」、3位「どこにもない」となっており、中学校では1位「教室」についで、2位に「どこにもない」がきている。
 
9 今の社会をどうとらえているか
 
問31「あなたは、今の社会についてどう思いますか」(小5以上への設問)
問31ー(1)「夢のある社会だと思いますか」
○「思う」という回答より「思わない」という回答が圧倒的に多くなっている。小学生で「思う」12.1%、「思わない」42.2%、中学生で「思う」7.1%、「思わない」62.8%となっており、学年進行で「思わない」が増えている。思春期という混沌とした発達段階ということもあろうが、学年進行とともにこのように社会への見通しを持てない気持ちが強くなっているということは、やはり社会の在り方の反映でもある。子どもにとって「知れば知るほどつらくなる」という全体状況の存在が大きな重しになっているということであろう。
 男女の比較では、中学校で、女子が男子より「思わない」と回答する割合が高くなっており、より批判的に社会を見ているという数値になっている。
 
問31ー(2)「努力すればむくわれる社会だと思いますか」
○「思う」という回答は、小学校で44.9%あったものが、中学校では35.3%に減っている。ほぼ学年進行とともに減ってきているといえる。逆に「思わない」は、学年進行ではっきりと増える傾向にある。中2、中3では、「思わない」が「思う」を逆転して多くなっている。
 問31ー(1)の設問への回答ともかかわって、学年が進むにつれて、社会の矛盾が見えてきて、見通しを失い、努力する気をも失っていくという傾向が見られるだろう。
 また、男女比較では、男子の方が女子よりも、「努力すればむくわれる」と受け止めている率が高くなっており、ここでも批判的な目が女子に高いということになる。
 
問31ー(3)「学歴や金がものいう社会だと思いますか」
○現実認識の進む中学生では「思う」という回答が64.3%に上っているが、小学生でも「思う」が37.1%にすでになっている。学年進行で増えており、中3では70.3%の者が、学歴や金がものいう社会だと思っている。自分をそう思い込ませて受験勉強に邁進しようというけなげな心理が働いているのか、逆に、そういう社会だからという諦めに通じているのか、気になるところである。
 
問31ー(4)「人にやさしい社会だと思いますか」
○「思う」の回答が、小学生12.1%、中学生4.0%で、それに対して「思わない」が小学生50.6%、中学生68.5%となっており、過半数が、人にやさしい社会だと思わないと答えている。「思わない」と答えた者の数は、学年進行とともに多くなっており、中3では、70.3%の者が「思わない」と答えている。小5で15.5%あった「思う」の回答は、中3では3.3%にまで減少している。子ども達にとって、「人にやさしい」と受け止めることができない社会になっているということであろう。
 また、男女比較では、各学年で、「思う」「思わない」とも男子の回答が高くなっており、女子は「わからない」と回答する率が高くなっている。男子のほうがいずれの回答にしても、はっきりと社会の評価をしようとする傾向があるようである。
 
問32「国連で『子どもの権利条約』がつくられたことを知っていますか」(小5以上)
○「知らない」が小学生では80.9%、中学生では60.6%にのぼっている。しかし、中3になると急に知っている者が多くなり、「知っている」が56.7%と、「知らない」の35.1%より多くなっている。社会科での学習だけを待たずに、「子どもの権利条約」の存在を子どもに知らせ、共に考える機会を何らかの形で持つことの必要性を考えさせられる。
§2子どもの意識を探るー学校規模別集計ー
 
◆学校規模の区分について
 小規模校は、子どもの人数を各学年1クラス25人×学年数を上限とする学校とした。 中規模校は、子どもの人数が各学年2クラス35人×学年数を上限とする学校とした。 大規模校は、子どもの人数がそれを超える学校とした。
 従って、小学校(3〜6年生)小規模:100人以下
               中規模:101〜280人
               大規模:281人以上
     中学校(1〜3年生)小規模:75人以下
               中規模:76〜210人
               大規模:211人以上   として集計・分析した。
 
 サンプル数(人):小学校  小規模 中規模  大規模   合計
          男子   500  632 1977 3109
          女子   469  613 1862 2944
          計    969 1245 3839 6053
     
          中学校  小規模  中規模 大規模   合計
          男子   131  491 2349 2971
          女子   116  430 2329 2875
          計    247  921 4678 5846※
  ※6ページの中学校の生徒数より174人多くなっています。これについて、調査   用紙の1枚目と2枚目が未セットになっていた学校のサンプルを全体集計からは   除外しましたが、規模別集計ではカウントしたためなどによるものです。
 
◆分析の対象について
 学校規模別に比較して、5〜6ポイント以上の差異があるデータを検討の対象とした。
 
◆学校規模別比較検討について
 以下、規模別に検討しました。あくまでも、相対的に比較検討したものです。
 
1 学校生活は楽しいか(問1,2,3,4)
 
 小規模小学校・・・「授業が分からない」ので学校が楽しくない。
 大規模小学校・・・「先生が好き」なので学校が楽しい。「友だちがいない」「先生が          嫌い」で学校が楽しくない。
 小規模中学校・・・「クラスが楽しい」ので学校が楽しい。「授業が分からない」から          学校が楽しくない。
 中規模中学校・・・「友だちがいる」から学校が楽しいが少ない。「先生がきらい」で          学校が楽しくない。
 大規模中学校・・・「クラブが楽しい」から学校が楽しい。「友だちがいない」「クラ          ブが楽しくない」から学校が楽しくない。
 
 小学校では、学校が「楽しい」は規模が大きくなるにつれ多くなっていて、「まあまあ楽しい」は規模が小さくなるにつれ多くなっている。合わせると規模の大小には大きく違いはない。中学校では、「楽しい」(小:32%、中:25%、大:32%)が中規模校で少なくなっていて、「まあまあ楽しい」を合わせると(小:77%、中:78%、大:82%)大規模校で多少は多くなっていく。
 学校が楽しい理由について、小学校では規模が小さくなると「先生が好き」(小:10%、中:14%、大:15%)が少なくなっていて、中規模校で「友だちがいる」(小:85%、中:80%、大:89%)が少なくなっている。学校が楽しくない理由については、小規模校は「友だちがいない」「先生が嫌い」が6〜12ポイント少なくなっていて、中規模校で「先生が嫌い」(小:42%、中:47%、大:41%)が多くなっている。
 学校が楽しい理由について、中学校では規模が小さくなるにつれ「クラスが楽しい」(小:59%、中:39%、大:33%)が多くなり、「クラブが楽しい」(小:14%、中:22%、大:24%)が少なくなっている。学校が楽しくない理由は、小規模校は「友だちがいない」が0%で中・大規模校より9〜10ポイント少なく、「クラブが楽しくない」が7%で、中・大規模校より6〜9ポイント少なくなっている。しかし、「授業が分からない」の理由は46%あり中・大規模校より11ポイント多くなっている。「学校を休みたい」については4〜7ポイント少なくなっている。
 
 
 
 
2 「いじめ」に対する意識
(1)「いじめ」(問6,7,8)
 
 小規模小学校・・・「いじめ」を見たとき「見ていた」が多い。
 中規模小学校・・・「いじめ」が少なくなっている
 小規模中学校・・・「いじめ」は少なくなっているが、見えにくい状態で存在
 中規模中学校・・・いじめられたとき「先生へ相談」が少ない。いじめを見たとき
          「一緒にした」が多い 
 小規模小学校で、「いじめ」を見たとき「見ていた」(小:50%、中:43%、大:44%)が多くなっている。また、中規模小学校で、いじめられた経験(小:20%、中:17%、大:23%)が若干少なくなっていて、「いじめ」を見たこと(小:35%、中:30%、大:35%)も少なくなっている。
 小規模中学校では、「いじめ」を「見たことがある」(小:7%、中:16%、大:17%)が9〜10ポイント少なくなっているが、いじめられた経験については、小規模校で2ポイントほど少なくなっているだけである。つまり、小規模中学校では「いじめ」は少なくなっているとはいえ、見えにくい状態で存在するのではないかといえる。
 また「いじめ」を見たとき「一緒にした」(小:23%、中:8%、大:14%)が小規模校で9〜15ポイント多くなっていて、中規模校で6〜15ポイント少なくなっている。
 中規模中学校では、いじめられたとき「先生に相談する」(小:20%、中:5%、大:21%)が15〜16ポイント少なくなっている。
 
(2)イラつき・ムカつき(問10)
 
 小規模小学校でイラつき・ムカつき多く、小規模中学校で少ない
 
 イラつき・ムカつきについては、小規模中学校では53%あり、中・大規模校より5〜9ポイント少なくなっている。先生や友だちとの良好な人間関係があり、イラつき・ムカつきが少なくなっているのではないかといえる。
 逆に、小学校ではむしろ小規模校では63%あり、中・大規模小学校より8〜10ポイント多くなっている。
 
 
3 学校への要望
(1)学校・先生への思い(問12、13)
 
 小規模小学校・・・学校への要望は少なくなっている。「もっと生徒の意見を聞いて」
 大規模小学校・・・「成績だけで評価しないで」「体罰、いやみ止めて」「校則ゆるめ          て」
 小規模中学校・・・「クラブ活動を増やして」
 中規模中学校・・・「もっとゆっくり分かるように教えて」
 大規模中学校・・・「もっと分かるように教えて」「成績だけで評価しないで」「体罰、          いやみ止めて」「生徒を馬鹿にしないで」「もっと生徒の意見を聞          いて」「校則ゆるめて」「クラブ活動減らして」
                               
 小学校では、小規模校で学校への要求は少なくなっている(小:44%、中:51%、大:48%)が、規模による大きな違いは見られない。要望の内容については、大規模校では「成績だけで人を評価しないで」(小:6%、中:10%、大:12%)「体罰、いやみ、ひにくをやめて」(小:8%、中:10%、大:13%)「校則をゆるめてもっと自由に」(小:30%、中:35%、大:43%)が多くなっている。小規模校では、「もっと生徒の意見を聞いて」(小:25%、中:16%、大:20%)が多くなっている。
 中学校では、小規模校と中・大規模校と比べて学校への要望は20ポイントほど少なくなっている(小:45%、中:66%、大:63%)。要望の内容については、特に「成績だけで人を評価しないでほしい」(小:22%、中:34%、大:34%)、「校則をゆるめてもっと自由にしてほしい」(小:33%、中:45%、大:52%)が10ポイント以上、小規模校が少なくなっている。「クラブを増やしてほしい」以外すべての項目で、大規模中学校の方が小規模校より要求が多くなっている。中規模校で「もっとゆっくり分かるように教えて」(小:31%、中:44%、大:36%)が8〜13ポイント多くなっている。
 
(2)頼れる人(問16)
 
 小規模中学校・・・「先生」を頼り
 中規模中学校・・・「親」へ頼ること少ない
 中・大規模校・・・「友だち」を頼る
 
 小学校では、中・大規模校になると自分にとって友だちが頼りになる存在になっている(小:59%、中:66%、大:64%)。
 中学校になると、小規模校で「親」(小:47%、中:39%、大:44%)や「先生」(小:10%、中:5%、大:6%)を頼る子どもの姿が多くなっている。中規模校で「親」が少なくなっている。また、中・大規模校になると「友だち」(小:62%、中:69%、大:71%)を頼りにしている。
 
4 自分を見つめる目(問17(1)〜(6))
 
 小規模小学校・・・「友だちのよくない誘いを断れない」
 大規模小学校・・・「正直な気持ちを言える」
 小規模中学校・・・「友だちのよくないことを断れ」て「友だちにどう思われている          かをあまり気にしない」
 中規模中学校・・・毎日がつまらなく、むなしいと思うことが「ない」が少ない。
 大規模中学校・・・「自分お正直な気持ちを言える」が「生まれてこない方がよかっ          た」という思いが多い。     
 
 小学校では、自分の正直な気持ちを言える子どもは大規模の方が高くなっている(小:72%、中:73%、大:77%)。また、小規模校の方がよくないことを誘われて「断れる」子どもは中・大規模校に比べ10ポイントほど少なくなっている(小:46%、中:57%、大:56%)。
 中学校では、大規模校で自分の正直な気持ちを言える子どもが多くなっている(小:74%、中:74%、大:80%)が、「自分なんか生まれてこない方がよかったと思うこと」が「よくある」子どもは中・大規模校で多くなっている(小:2%、中:7%、大:6%)。また、小規模校は中・大規模校より、友だちにどう思われているかをあまり気にせず生活している(小:27%、中:31%、大:32%)。さらに、よくないことを誘われて「断れる」子どもは小規模校で多く、中規模校で少なくなっている(小:58%、中:45%、大:52%)。逆に小規模校の方が58%で10ポイント以上多くなっている。
 中規模中学校で、毎日がつまらなく、むなしいと思うことが「ない」(小:48%、中:41%、大:45%)が少なくなっている。
 
 
 
5 自己形成の過程でどのような経験をしてきているか                     (問18)
 
 大規模小学校・・・・・「親や先生、友だちに自分のことを分かってもらえてうれし            かった経験」や「小説や音楽に感動した経験」が「よくある」
 小規模中学校・・・・・「自分の力で何かを作り上げた経験」が多い。
            「親や先生に自分のことを分かってもらってうれしかった経験」            「友だちどうしで考えを出し合ってうれしかった経験」が「ほ            とんどない」子どもが少ない。
 中・大規模中学校・・・「友だちに自分のことを分かってもらってうれしかった経験」            が「よくある」              
 
 小学校で、規模が大きくなるにつれ親や先生に自分のことを分かってもらえてうれしかった経験が「よくある」子どもが多くなっている(小:18%、中:22%、大:25%)が、「少しある」を加えると規模により違いはほとんどない。友だちに分かってもらえてよかった経験が「よくある」子どもも多くなっている(小:25%、中:28%、大:31%)が、「少しある」を加えるとその差はほとんどない。友だちどうしで考えを出し合った経験は規模が小さい方が若干多く(小:41%、中:40%、大:39%)、自分で何かを作り上げた経験は規模が大きい方が多い(小:38%、中:39%、大:42%)。小説を読んだり音楽を聞いて感動した経験は規模が大きいほど多くなっている(小:41%、中:46%、大:48%)が、「少しある」を加えるとその差はほとんどない。
 中学校では、親や先生に自分のことを分かってもらって、うれしかった経験が「よくある」(小:11%、中:11%、大:15%)のは大規模校で多くなっているが、「ほとんどない」(小:22%、中:33%、大:29%)は中・大規模校で多くなっている。友だちどうしで考えを出し合ってうれしかった経験が「ほとんどない」(小:10%、中:17%、大:17%)が小規模校で少なくなっている。友だちに分かってもらってうれしかった経験が「よくある」のは規模が大きくなるにつれ多くなっていて(小:24%、中:28%、大:29%)、「少しある」を入れると規模による違いはない。また、自分で何かを作り上げうれしかった経験は小規模校で多くなっている(小:34%、中:29%、大:29%)。
 
 
 
6 仲間・グループについての意識(問19,20,21)
 
 小学校大規模校・・・仲間に気遣いグループ内で居場所をつくっている子どもたち。
 大規模中学校・・・・仲間に気遣いグループを確保しているが、必ずしも「ホッとす           る」グループにはなっていない。
 
 小学生では、学校規模が大きくなるにつれ、いつも行動を共にするグループを持つ子どもが若干多く(小:79%、中:81%、大:83%)、「言いたいことが言え」(小:37%、中47%、大:50%)、「困ったときに自分を守ってくれ」(小:36%、中:42%、大:46%)、「一緒にいるだけでホッとして」(小:49%、中:55%、大:57%)、「学力や能力で差別されなく」(小:42%、中:49%、大:49%)、「自分の興味や関心を深めることができる」(小:36%、中:40%、大:43%)経験が多くなっている。仲間への気遣いが「よくある」経験は、学校規模が大きいほど多くなっている(小:20%、中:27%、大:27%)
 中学生では、大規模校で、いつも行動を共にするグループを持つ子どもが多くなっている(小:83%、中:83%、大:90%)が、そのグループ内で「一緒にいるだけでホッとする」(小:59%、中:52%、大:55%)経験は小規模校の方が多くなっている。仲間への満足度は学校規模による違いはない。中規模の中学校で上記項目のすべてが若干(数%)少なくなっている。また、仲間への気遣いが「よくある」経験は、学校規模が大きいほど多くなっている(小:13%、中:15%、大:20%)が、「少しある」を加えると学校規模による違いはほとんどない。
 
7 家族、教師に対する意識
(1)親からの期待、自分の将来(問23,24)
 
 親からの期待・・・大規模校で「いい高校・大学へ」
          小規模中学校で「強い人間に」
          中規模中学校で「優しい人間に」が少ない
 自分自身は・・・・小規模中学校で「家族を大切に」
 
 親から感じる期待について、小学校では、中・大規模校で「勉強ができてよい高校・大学に行くこと」(小28%、中:36%、大:33%)が高くなっている。
 親から感じる期待について、中学校では、規模が大きくなるにつれ「勉強ができてよい高校・大学に行くこと」(小25%、中:29%、大:31%)が高くなっていて、逆に「強い人間になること」(小:25%、中:19%、大:19%)が小規模校で多くなっている。また、中規模校で「優しい人間になること」(小:42%、中:36%、大:41%)が少なくなっている。一方、自分は「家族を大切にする人」(小:57%、中:45%、大:47%)になりたいが小規模中学校で10〜12ポイント多くなっている。
 
(2)親への思い(問25,26)
 
 中・大規模中学校・・・父親「うるさい」、母親「困ったときに受け止めてくれる」
 小規模中学校・・・・・母親「私のことを思ってくれている」
 
 中学校で、父親について「うるさい」(小:24%、中:31%、大:29%)と感じている子どもは小規模校で少なくなっている。母親については「私のことを思ってくれている」(小:46%、中:38%、大:40%)が小規模校で多くなっていて、「私のことを困ったときに受け止めてくれる」(小:13%、中:18%、大:18%)が中・大規模校で多くなっている。小学校では、学校規模による違いは見られない。
 
(3)教師への思い(問27)
 
 小規模中学校・・・教師と子どもの心の通い合う人間関係
 
 小規模小学校で「頼りになる」(小:31%、中:36%、大:34%)が中・大規模校より少なくなっている。
 一方、小規模中学校で「頼りになる」(小:30%、中:23%、大:22%)についても7〜8ポイント多くなっている。また、小規模中学校で、学校の先生を「やさしい」(小:42%、中:25%、大:29%)と思っている子どもが13〜17ポイント多く、逆に「うるさい」(小:29%、中:42%、大:39%)が10〜13ポイント少なくなっている。「私のことを思ってくれている」や「私が困ったとき受け止めてくれる」についても若干(3〜5%)多くなっている。小規模中学校で教師と子どもの人間関係に積極面を見ることができる。
 
 
 
8 子どものホッとできる居場所(問28,29,30)
 
 小規模校・・・・・「家庭」の居心地度が高い  
 大規模小学校・・・「教室」がホッとする
 中規模中学校・・・居場所「教室」に落ち込み
 小規模中学校・・・学校内のどこかに居場所がある  
 
 小規模校で、一番ホッとする場所が「私の家」(小学 小:81%、中:74%、大:78%)(中学 小:76%、中:70%、大:74%)が多くなっていて、中規模校で少なくなっている。中規模中学校では、家の中で「居間」(小:26%、中:16%、大:21%)が少なくなっている。
 学校内で一番ホッとする場所について、大規模の小学校で「教室」(小:40%、中:40%、大:49%)が小・中規模校より9ポイント多くなっている。
 中学校では、中規模校で「教室」(小:49%、中:39%、大:51%)が小・大規模校より10〜12ポイント少なくなっている。学校での居場所が「どこにもない」(小:8%、中:16%、大:17%)という回答は、小規模校では8〜9ポイント少なくなっている。
 
9 いまの社会をどうとらえているか
             (問31,32:小5以上)
 
 小規模中学校・・・努力すればむくわれる社会だと「思う」多い。人にやさしい社会          だとは「思わない」少なく、「分からない」多い。
 小規模小学校と大規模中学校・・・子どもの権利条約を「知らない」が多い
 
 小規模中学校で、努力すればむくわれる社会だと「思う」(小:39%、中:32%、大:34%)が少なくなっている。また、小規模校で、人にやさしい社会だと「思わない」(小:61%、中:67%、大:67%)が少なくなっているが、「分からない」(小:29%、中:23%、大:26%)が若干多くなっている。
 子どもの権利条約を「知らない」(小学校 小:45%、中:38%、大:38%)(中学校 小:53%、中:54%、大:60%)は、小規模小学校で多く、大規模中学校でも多くなっている。
§3「子どもの発達」という視点から
        調査結果を読む 
 
(1)社会そのものの行き詰まり感、競争による息苦し   さからくる閉塞感を感じる子ども達
 
 行き詰まりを感じさせる社会状況を子どもは鋭く感じ取っている。見通しをもてない社会、人にやさしくない社会と受け止めざるを得ない状況の中で、イライラがつのっている姿がある。勉強も、人間関係も、見通しを持てないでいる。
 問31への回答からは、小学校から「夢のある社会と思わない」「学歴や金がものいう社会だと思う」「人にやさしい社会だと思わない」「努力してむくわれる社会だと思えない」という否定的な受け止め方をしている傾向が強いことがはっきり読み取れ、また学年進行とともにその傾向は強く出てきている。学年が進むにつれて社会の矛盾が見えてきて、見通しを与えてくれるものもなく、努力をする気をも失っていくという、「知れば知るほどつらくなる」という状況が子どもに重くのしかかっていることが見えている。
 学習が進み、ものを見る力が備われば備わるほど、社会の矛盾、行き詰まりが見えてくるという閉塞回路があり、そこを脱するためには受験という短期的なはっきりした見通しにすがらざるをえず、その結果、敗者はますます見通しを失い、勝者も本当の意味での見通しを育てていないという事態が待ち受けていることになる。
 問5の学校を休みたいと思う理由について聞いた設問への回答では、「なんとなく」という理由が半数にのぼっており、先行きの見通しのない中で、社会生活全体の「なんとなく何もしたくない」という倦怠感、無気力感が子どもにも影響を与えているという構図を見ることができるように思える。
 問17の「自分のことを好きですか」という設問への回答の傾向で、女子が「あまり好きでない」「嫌い」ととらえる割合が高く出ている。社会における女性の地位の問題、女性の就職難の問題、女の子の家庭、地域、学校での接せられ方の問題がこの傾向を作っていると思われる。ここでは、人生の先行きの見通しの立たない状況が、女の子に特に強く出ているということになろう。見通しをもてない社会でイライラ感がつのるという、一つの局面がアンケート結果にも表われていると指摘できよう。
 
 
 
(2)見えている否定的姿を子どもの発達のもつれとし   て見ることの大切さ
 
 他方で、これを子どもの批判的な力の育ちの芽として見る視点も持つ必要があるだろう。子どもの持つ可能性、教育が働きかけるべき人間的発達の可能性の基盤をアンケート結果にも、確実に見ることができる。発達の観点で受け止めることが必要。
 例えば、
 ・学校がつまらない理由に、「授業が分からない」ということをあげたこの割合は高く、また特に小3で57.6%と高くなっているが、これは勉強でのつまずきの始まりを示していると同時に、分かりたいという欲求の表現としても見ることができるし、そう見るべきであろう。子どもは、学校に期待し、授業に期待しているのである。
 ・友だちのことで学校を休みたいと思う子が多くいる(特に女子に多くなっている)ことが、アンケート結果に出ているが、これは人間関係に振り回される姿として出てはいるが、その根底には、人間関係を求めるまっとうな欲求、人間関係によって自分の人生は豊かになるという知らず知らずの正常な感覚をもっているということを、読み取る必要があろう。課題は、そのまっとうな欲求をいかに実現する力をつけさせるかということになるだろう。
 実際、「あなたはどんな大人になりたいですか」と問われて、「家族を大切にする人」という答えが、小学生で639%、中学生でも48.4%にのぼっており、あたたかい人間関係が自分の人生を支えるということをわかっており、それを求める欲求を強く持っていることが示されている。また、「いま、自分にとってたよりになる人がいますか」という問16に対して、中学生では「友だち」の項目に72.2%が回答しており、中学生の友達関係に重きをおく傾向、友達と信頼関係を持ちたいという強い欲求があるということが読み取れる。
 ・親、教師をどう見ているかを問う設問への回答では、親、先生を批判的に見ている傾向が、学年進行とともに強くなっていることがうかがえるが、これは、「自分は自分」という自己判断の欲求、知的論理的能力の育ちとして、明るい面としてもとらえなければならないだろう。
 この側面は、そのままの単なる「もやもや感」のレベルに止まれば、思春期の危うい姿をマイナス面にだけ出してしまうことになるが、他面それは、批判的にものごとを見て、批判的に学習していく力を育てる基盤としてもとらえる必要があろう。それを、民主主義社会に生きる人間としての力、すなわち集団の中での民主的人間関係の力や、先を見通しながら自分で判断を下すための学力を子どもに獲得させていくという教育の課題に取り組むよりどころとしていかなければならない。
 
(3)家庭を大切にするという当然の側面と、社会の「私   事化」の進行という側面
 
 調査の中で、「どういう大人になりたいか」と問われて(問24)、どの学年も「家族を大切にする人」という回答が圧倒的に多かったが、このことは、家庭があたたかい、自分をうけとめてくれる場であってほしい、あるいは、あたたかい人間関係を求めるといった当然あるべき健全な欲求の表れとして積極的に評価すべきことでもある。
 問28で「いま一番ホッとできる場所はどこですか」と問われて、どの学年の子も75%前後が「私の家」と答えており、これが多い数字か少ない数字かは、以前の統計と比べるなどしてみないとわからないが、いずれにしてもこれだけの数の子どもが家庭をホッとする場所としていることは、健全な面としてとらえることができよう。
 しかし、他面で、これらの数字を、社会全体の「私事化」の傾向を表わしているものとして読むこともできるのではないだろうか。家に閉じこもる傾向、社会の他のメンバーとの交わりを避けて、家族内だけで生活しようという傾向、家族だけで楽しみを求める傾向、こういう傾向は、子どもを育てる基盤としての家庭を大切にするという意味では、必ずしも悪いことではないが、他面、社会の中で子どもを育てるという面では、弱点にもなりうるものである。社会的人間関係の力の弱体化が、子どもだけでなく、社会全体で問題になっているが、これに連なる問題であろう。
 この調査でも、問5で学校を休みたい理由を尋ねたところ、「なんとなく」という回答が50%近くにのぼった。この「なんとなく」が、家庭から外になんとなく出ていきたくないという、閉じこもり的な感覚からくるものであるとも考えられる。そうであるとしたら、社会の「私事化」による影響の下で、子どもの学校への忌避感が育てられているとも考えられるであろう。広く社会のありかたとして、考えてみたい問題である。
 家庭が子どもの居場所として、ホッとできる場所として大切だということは、そこで自分が受けとめてもらえるという安心感を得て、エネルギーを補給し、そこから新しい未知の世界に跳び込んでいくということが他方であって、はじめて居場所としての意味を持ちうるのである。家庭の中だけにいて、社会の中に踏み込んでいくという機会を持たせないということであれば、それは「あまやかし」であり、過保護であるということになろう。家庭を子どもの居場所として大切に考えるという時、他方でこのことを常に考えていかなければならないだろう。
 
(4)注目すべき学年、小学校3、4年生
 
 本来積極的活動的な外向的生活を通してことを成し遂げ、自分に自信をもっていくべき最も少年らしい時期、ギャングエイジと言われる小3、小4の年代に、勉強につまずき、人間関係につまずきということになっていることの大きな問題が読み取れた。いくつかの項目で、小学校3年生の数値が突出して特徴的であった。
 例えば
 ・問3への回答には、学校が楽しくない理由に「授業が分からない」をあげている率が小3に一番高く出ているということ、問5への回答でも、学校を休みたい理由として「勉強のことで」をあげている子の割合が小3で一番高くなっていること、などがある。
 反面、「いじめ」を見て注意したは小3、小4で一番多くなっているし、「さびしそうにしている仲間のことを気遣うか」(問22)についての回答では、仲間への気遣いがよくなされている学年としての特徴もこの学年に出ている。素直な良さを持っている年代であることも読み取れる。
 これらのことを考えると、小3、4学年は、学校生活のつまずきの芽が生まれる学年として注目されるべき学年ではないかと思われる。高学年での学級崩壊、荒れの芽がこのあたりでつくられているのではないか。授業が分からない、つまらないと感じるとらえかたがこの学年に特徴的に表われている。もっとも、「授業が分からない、つまらない」と感じるということは、授業への期待があるということであり、小学校高学年、中学生になると授業が分かる、あるいは面白いという期待そのものが失われていってしまうということがあると思われる。その意味では、3、4年生は、働きかけ方によっては、将来楽しい学校生活を送れる可能性を大いに持った学年としても受けとめられよう。
 小学校1、2年生を調査していないので、わからない面もあるが、小3が注目すべき、また、もっともケアーすべき学年であることはいえるのではないか。
 小3、小4は、一般に9、10歳の壁と言われている。論理的抽象的思考の力が育ち始めるということを前提にして、それまで具体物を使ってのゆったりとした授業が急に次々に進む抽象的な授業になっていってしまう時期でもある。橋渡しの時期であるからこそ、ゆったりと、具体物、半具体物を十分に使っての授業をしたい。そこに現在の小3、4の大きな問題があるのではないか。新指導要領では、小数、分数への導入が3年から4年へと延ばされたが、ただ遅らせるということだけで問題は解決するものではなく、余裕を持った時間設定と取り扱いが求められる。
 また、生活科から理科、社会科への移行も問題になる。「楽しさ」だけを問題にする生活科から、いきなり学ぶ内容重視の理科、社会科への移行が行われることに問題がないか。そこに子どものとまどいが生まれるのではないか。生活科でも理科、社会科的な内容(法則性の学習)は学べるし、そういう生活科をしていれば、3年での理科、社会科への移行も問題がないのではないか。
 また、生活科では一人一人の子どもの関心に合わせるということで、一人学びになることが許容される傾向にあるが、そのような個別型学習に終始してしまい、集団で考え方をつきあわせる学習を経験しないと、3年生からの教科学習でも、集団での学習になれずに孤軍奮闘型の学習になってしまうおそれがある。実際にその傾向は見られる。人間関係の中で、論議し、学びあっていくという力がつかないし、学ぶ内容も深まらないことになるのではないか。
 
(5)小学校から中学校への移行期が抱える問題点
 
 このアンケートから浮かび上がってくるもう一つの問題として、小学校から中学校への移行の問題が上げられる。
 問3の学校が楽しい、楽しくないの理由を聞いた設問への回答で、学校が楽しいという理由に「先生が好き」ということをあげる子の割合は、小学校6年の7.9%から中学校1年の3.3%へと急激な減少を見せている。また、学校が楽しくないという理由に「先生が嫌い」ということをあげている子どもの割合を見ても、小学校全体の31.4%から中学校全体の43.2%へと増加しているが、特に中1の50.2%が目立って多くなっている。
 これらのことは、クラス担任制の小学校から、教科担任制の中学校への移行でとまどう子ども達の姿と見ることができよう。教師との人間的な結び付きの強さの点で、小学校とくらべて中学校では弱くならざるをえないということ、反面また、多くの教師から授業を受けることにより、その中には自分の気持ちに合わない教師もいるということが、教師に対する感情全体に影響を与えていると思われる。
 この移行は、やり方によっては、発達段階にあった良い移行の機会、例えば多くの大人に出会って、人間の多様性を知っていく機会とすることもできるかもしれないが、このアンケートの限りでは、「先生が嫌い」という教師への信頼感を失っていくという、悪い作用として表われてしまっていることが読み取れる。
 また、学校への要望を聞く問13で、「校則をゆるめてもっと自由にしてほしい」という項目への回答が、中1で最も高くなっているが、小学校から中学校へ入って、子どもを縛る規則が急に多くなるということによるとまどいが読み取れる。それによる閉塞感がこの回答を多くさせているのではないか。小学校から中学校への移行の問題が、ここにも表われている。
 
 
§4「学校づくり」という視点から調査結果を読む
 
1 学校づくりのキーポイント
  ・・・「人間関係づくり」と「よく分かる授業づくり」
 
 学校が楽しい理由については、小学生では「友だち」関係や「クラス」が楽しいかどうかが大きく関わっていて、中学生では「友だち」「クラス」に加えて「クラブ」が理由となっている。学校が楽しくない理由は小・中学校とも「授業が分からない」と「先生が嫌い」が多くなっている。
 学校を休みたい理由については、女子の場合、特に「友だち」が多くなっている。
 楽しい学校づくりをすすめるうえで、子ども同士、子どもと教師の心が通いあう人間関係づくり、よくわかる授業づくりがキーポイントといえる。
 
2 「イラつき」「ムカつき」は複合汚染。
  ・・・学校内に「ホッ」とできる居場所づくり、父     母・教職員の対話と共同、子どもとともに生     活を創るパートナーに
 
 学校が楽しくない理由で「その他」が多くなっている。学校を休みたいと思ったことのある理由は「何となく」が最も多くなっている。小学3年生ですでに半数の子どもたちがイラつきムカついている。学年がすすむにつれ、いじめの件数は少なくなっていても、いじめが固定化し、陰湿・深刻化してきているという現状がある。
 子どもたちは、見通しのもてない社会を知れば知るほど、イラつきやむなしさをため込んでいる(特に女子)。社会に対するあきらめ感や無力感が広がっているという状況が見られる。大人の疲れている姿に、希望を持てない未来を描いているのではないだろうか。受験期が近づくにつれその傾向が強くなっているといえる。
 学校内でも先生や友だちとの人間関係に気遣い疲れている姿がうかがえる。そのなかで感動体験も少なくなってきて、学校内に居場所がないという子どもたちが学年進行とともに増加している。
 社会全体の様々な矛盾が弱者である子どもたちに押し寄せていることから、子どもたちは「その他」や「何となく」という理由で学校に行きたくなくなり、イラつきやムカつきをため込み、「いじめ」が陰湿化・深刻化してきているといえる。今日の教育困難は「複合汚染」によるものといえる。
 このように複合汚染であるからこそ、今日の教育困難は、学校だけで、また家庭だけで解決できるような課題でないといえる。父母・地域と学校・教職員が、子どもの現状や願いを共有するなかでこそ克服できる性質の課題になっているといえる。
 このような課題の一方で、いい学校生活をつくりたい、友だちとのいい関係をつくりたいという願いが高まっているのも事実である。仲間とともに、それぞれの生活の現状や悩み、生活をよくしたいという願いを語り合い共有しあい、その願いを仲間と力を合わせて実現する経験を豊かにすることが求められている。そのために、大人(父母・教職員)自身が子どもとの対話をすすめ、子どもの願いをしっかりくみとり、子どもたちとともにその願いを実現するために、子どもにとって教師が「うるさい」存在でなく生活をつくり上げる共同のパートナーとなることが大切といえる。とりわけ、思春期の子どもたちとの関係で大事にしたい課題といえる。
 
3 子どもの声に耳を傾けて学校づくりを
    ・・・昼休みを長く(小学生)
       校則をゆるめてもっと自由に(中学生)
 
 学校への要望は学年進行とともに高くなっていて、中3にもなると3分の2以上の子どもが学校・教師への要望をつのらせている。
 その要望の内容は、小学生は「昼休みを長くしてほしい」が最も多く、次いで「校則をゆるめてもっと自由に」となっている。
 中学生では「校則ゆるめてもっと自由に」が最も多く、次いで「分かるように教えてほしい」「もっと生徒の意見を聞いて」「成績だけで評価しないで」となっている。
 実際に、子どものアンケートを実施するなどして、子どもの声を聞いて昼休みを長くした小学校ではゆとりが増えて「子どもと教師のふれあいの時間が増えた」「子どもの笑顔も増えた」などの声があります。
 生徒会が中心になり、教師がそれを応援して校則を見直すとりくみをしている中学校では、子ども達が生きいきして学校生活を送っているという報告があります。また、校則見直しのとりくみをとおして、それまで学校に来づらい子が登校しはじめたという実践もあります。
 実際に個々の学校で子ども達の願いは何かをつかみ、子ども達の願いにかなう学校づくり、子どもの生の声をもとにしたとりくみがキーポイントといえます。
 
 
小学生
1位 もっと昼休みを長くしてほしい   68%
2位 校則を緩めてもっと自由にして   39%
3位 もっと生徒の意見を聞いてほしい  20%
4位 もっとゆっくり分かるように教えて 19%
5位 生徒をバカにしないでほしい    12%
 
中学生 
1位 校則を緩めてもっと自由にして   52%
2位 もっとゆっくり分かるように教えて 39%
3位 成績だけで人を評価しないでほしい 35% 
4位 もっと生徒の意見を聞いてほしい  39%
5位 生徒をバカにしないでほしい    22%
 
4 女子の課題
  ・・・言いたいことを言いあえて、お互いの違いを     分かりあえる仲間づくりを
     出番と成就感ある豊かな体験を
 
 女子は、正直な気持ちを言える友だちや、仲間関係の中でホッとできる姿が多い。友だちや親・教師との関係などで感動体験も多く持っている。しかし、友だちのよくない誘いを断れず、友だちに気遣っている姿が多く、自分と違うグループとの関わりを避ける傾向にあるのではないかと思われる。
 イラつき・ムカつきは多く、学年がすすむにつれ男子との差は広がっている。毎日をつまらない・むなしいと感じ、自分を好きになれないという回答が多くなっている。
 学校への要望も多く、先生には「もっとゆっくり分かるように教えてほしい」「もっと生徒の意見を聞いてほしい」と、とりわけ中学女子の願いが高まっている。
 言いたいことが言える仲間に満足し、そこがホッとできる居場所になっているといえる。友だちや大人との人間関係のなかに喜びや悩みを多く持っている女子の姿がうかがえる。ということは、心の通い合う人間関係を求める女子の願いが強く存在しているといえる。
 また、社会や生活のなかでの男女の違いからくるものが多く存在するのかもしれないが、女の子は気の合う仲間のなかでホッとしながらも、仲間に気遣い、今の自分に自信と納得を得ることができず、イラつきを高めているといえる。成就感を求めているといえる。お互いの思いや行動が分かり合え、励まし合ったり、力を合わせて仲間とともに成長したいと願い、成就感を求めている女子の姿がうかがえる。
 
5 男子の課題
  ・・・孤軍奮闘の男子。悩みを語りあい、力を合わ     せて課題を解決するすばらしさの体験を
 
 男子の方が、いじめられたとき反発するか、黙っている場合が多くなっている。いじめられた時、男子はだれかに相談することが少なく一人で悶々と悩むという場合が多くなっているのではないか。ということは、「いじめ」がどんどんとエスカレートしていくことも予測できる。
 小3で10%の男子が、「生まれてこない方がよかったという気持ちになることがある」と答えている。これは小3で、「勉強が分からなくて、学校を休みたい」という割合が高くなっていて、とりわけ男子が22%ともっとも高くなっていることと関係しているのではないかと思える。
 仲間との感動体験や、先生や親に分かってもらえてうれしかった経験も少なくなっている。ところが、自分の力で何かをつくりあげた経験が多く、孤軍奮闘している男子の姿が浮かび上がってくる。仲間と共同して得られる感動体験や、みんなと一緒に悩みや課題を話し合うことの大事さと、そのことで諸問題が解決することのすばらしさを豊富に体験できることが求められるのではないだろうか。
 
6 小学校中学年の課題
  ・・・生活と結びついたよく分かる授業、育ちあえ     る仲間づくり
 
 §3で指摘したように、小3で学校が楽しくない理由に「授業が分からない」が多く、仲間への気遣いも多くなっている。小3、小4学年は、学校生活のつまずきの芽が生まれる学年として注目させるべき学年であり、「学級崩壊」「荒れ」の芽が表れる時期ではないかと思われる。また、生活科から理科、社会科への移行の問題や、孤軍奮闘の学びではなく意見を交わし合い共同の学びをどうつくるかという課題など、明らかになってきているといえる。
 その中で、よく分かる授業、生活と結びついた学習、共同して育ちあえる仲間づくり、出番と成就感のある学校生活をどうつくるかが問われている。
 
7 思春期の課題
  ・・・生活と結びついた学びと、仲間と共同する喜     びを。「いまのあなたのままでいいのよ」のメ     ッセージを
     
 思春期になると、頼れる人は「親」から「友だち」に移行していく。ところが、その友だちに気遣いをしている実態が浮かび上がっている。また、頼れる人が「誰もいない」という実態も多くなっている。友だちとの豊かな関係をつくりながら、親から自立しようとする姿がある。
 しかし、受験期を前に子どもたちの友だち関係が安定せず、学校内に居場所が少なくなってきていることがうかがえる。正直な気持ちを言える友だちは学年進行とともに多くなる傾向にあるが、一方で友だちに依存しながらも友だちにどう思われているのかが気になり、気遣いしている子どもが増えている(特に女子)。
 また、学年がすすむにつれ、自分のことを好きになれず「つまらない・むなしい」と感じる子どもが増えている。中学生になると、自分にとって自信のあることが減少してきている。(特に女子)
 本来、学習や生活経験を積めば積むほど、生きる意欲や自己肯定感が高まるべきものであるが、逆に低下している。競争の教育のなかで、学ぶ喜びをつかむことができなくなってきているのではないか。とりわけ、男子より女子の方が顕著に表れているといえる。思春期の子どもをとりまく(とりわけ女子の)生活環境や学習環境が人間として豊かに成長できる環境になっていないのではないか。
 思春期の子どもたちにとって、友だち関係をどれだけ豊かにするかがとりわけ重要であるといえる。生活と結びついた学び、仲間と共同するすばらしさを多く実感できるような体験が求められるのではないか。お互いの違いを認めあえて、ありのままの自分自身も受け入れられる仲間づくりをすすめること、「いまのあなたのままが、すてきだよ」のメッセージを送り続けること(とりわけ女子)が大切な課題といえる。同時に、子どもが豊かに育ち合える環境づくりのため、大人たちの責任が問われているのではないだろうか。
§5学校規模別集計結果を読む
 
  小規模小学校……イラつき。友がちの誘いを断れない
  小規模中学校……いい人間関係、居場所もあり、イラつき減少           先生は、優しく、頼りになる
  大規模小・中学校……管理や校則、成績が支配的
            あたたかい人間関係を
                    
1 小学校の課題と特徴
(1)小規模の小学校の特徴と課題
 
 学校と先生に対しては要望が少なくなっているが、そのなかでも「成績だけで評価しないで」「校則をゆるめて」の要望は少ない。小規模小学校での教師と子どもの人間関係に競争や管理のシステムがあまり入っていないことがうかがえる。競争でなく共同して生活している小規模校の地域性(へき地性)が表出しているものと思われる。学校が楽しくない理由について「友だちがいない」「先生が嫌い」が少なくなっている。ここにも、比較的いい人間関係にあることをうかがえる。
 また、学校が楽しくない理由として、小・中規模校で「勉強が分からない」が多くなっている。これは複式学級での授業であったり、大規模校に比べて教育条件がゆきとどいていないという状況があるのではないだろうか。
 学校への要望は少なくなっているが、そのなかで比較的多くなっている要望は「もっと生徒の意見を聞いて」である。ところが、全体の児童数からの率でいえば、中・大規模の小学校の率とあまり変わらない(2ポイント多いのみ)。「先生が頼りになる」も若干少なくなっているが、その分、親やきょうだいを頼りにしている率が若干多くなっている(問16、問27)。家庭の中で、子どもとの対話やふれあいが比較的多いのではないかと思える。だから、子どもたちにとって、家庭の中がホッとする居場所になっている。
 学校が「楽しい」については、中・大規模校に比べ少なくなっているが、「まあまあ楽しい」を加えると、変わりはない。子どもの数が多くなることで、遊びの内容にも変化があり、規模の大きな学校で「楽しい」が増えているのではないだろうか。
 仲間への気遣いについては少なく、グループ内での居場所も多くなっていない。友だちのよくない誘いを断れないという状況がある。このような中で、ムカつき・イラつきが高まっている。子どもの人数が少ない中で、うまくいけば気遣いなく、いい友だち関係が生まれる。一方、一つまづけばこじれて、うまくいかない人間関係が続きストレスが蓄積されることになりかねないのではないだろうか。
 子どもたちの一人ひとりの思いを語りあえて、違いを大事にできる仲間づくりが大切といえる。また、子どもの権利条約を知らない子どもが多く、その内容について伝えることも課題である。
 
(2)大規模の小学校の特徴と課題
 
 学校と先生に対しては「成績だけで評価しないで」「体罰、いやみ止めて」「校則ゆるめて」の願いが高くなっている。また、子どもたちは親からは勉強ができることへの期待を多く感じている。教師と子どもの関係が、管理や校則、競争の教育が色濃い関係になっていることがうかがえる。と同時に、学校内だけでなく、家庭や地域社会が競争の教育にまきこまれ、「勉強」へのこだわりがかなり強くなっている現状にあるといえる。
 学校規模が大きくなるにつれ、学校が「楽しい」が多くなっている。子どもの人数が多く、そのなかでいろんなふれあいができることからくる楽しさであり、いろんな個性ある先生との出会いからくる「楽しさ」であると思われる。というのは、学校が楽しい理由として「先生が好き」が多く、学校が嫌いな理由として「友だちいない」「先生がきらい」が多くなっている。先生や友だちとの関係がいいかどうかが、学校が楽しい場になるかどうかを決定づけているといえる。また、学校内では教室がホッとする居場所になっていることから、友だちとのいろんな交わりができる場がホッとする場になっているのではないか。
 また、学校が楽しくない理由の中で「授業が分からない」が少なくなっている。これは、必ずしも「勉強が分かっている」ということではないのではないだろうか。子どもたちは、勉強が分からなくても仕方がない、当たり前とあきらめている実態がないのだろうか。人数が多い中で、学習の楽しさ、分かることのすばらしさが認識されなくなってきているのではないだろうか、検討する必要がある。
 多くの子どもたちは、仲間に対して気遣い、グループ内で居場所をつくっている。そのグループ内では正直な気持ちを言える関係が多くあり、友だちに自分のことを分かってもらえて嬉しかった経験を多く持っている。多くの子どもたちは友だちを頼りにしている。ここにも、友だち関係のあり様が子どもたちのなかに大きな位置を占めていることがうかがえる。
 地域性を考えると、人的であるが文化環境が比較的整っている。そのなかで、子どもたちは小説や音楽に感動した経験を多く持っている。また、親や先生に自分のことを分かってもらえて嬉しかった経験も多く持っているなどの積極面も明らかになった。 
 友だちどうしや先生との関係(人間関係)づくり(人として大事にされるあたたかい人間関係づくり)と、管理や校則、競争の教育が支配的でない学校づくり、みんなで一緒に力を合わせて賢くなり成長できることが実感できる学校(授業)づくりが大きなキーポイントといえる。そのために、学校内だけでなく、地域・父母とともに子どもの育ちを考える活動が求められている。
 
2 中学校の課題と特徴
(1)小規模の中学校の特徴と課題
 
 学校が楽しい理由として「クラスが楽しい」が多くなっている。また、多くの子どもは、学校内のどこかに居場所があり、仲間やグループ内でホッとできる経験を多くもっている。また、友だちのよくないことを断れて、友だちにどう思われているかをあまり気にしない子どもも多くなっている。小学校時代に多かったイラつき・ムカつきが中学校になって少なくなっている。
 子どもにとって、先生は頼りになり、優しく、うるさくなく、私のことを思ってくれて、困ったときに受け止めてくれる存在になっている。
 ここには、教師と子どものいい関係がはっきりとでている。子ども同士の関係についても、小学校時代のもまれ合いをとおしてお互いの分かり合いがすすみ、心の通い合ういい人間関係が生まれてきていることがはっきりとうかがえる。
 学校が楽しくない理由として「授業が分からない」が多くなっている。小学校時代の複式での授業や不十分な教育条件(中学校でのことも含め)の課題からくるのではないだろうか。また、大規模校の地域に比べ、競争や能力主義が広がっていない地域性を考えれば、詰め込みの学習指導要領の被害を受けやすい状態にあるともいえる。生活と結びついて学習が実感できるような授業づくりを量質ともに追究する必要があるといえる。
 学校と先生に対して、クラブ活動を増やしてほしいという願いが多くなっている。この背景には、子どもの人数が少ない中で、チームプレーを必要とする部活動などでは充分に活動できる条件がないという状況があるのではないか。また、校区が広く、子どもの通学範囲が広く、十分に時間をとって部活動をできないという状況もあるのではないか。部活動のあり様について、子どもの声を聞きながら、地域・父母との連携も含め検討する必要があるといえる。
 「いじめ」を見たことのある経験はかなり少なく、いじめられた経験も少し少なくなっている。「いじめ」については少なくなっているが、見えにくい状態で存在しているのではないかと思われる。
 また、先生や親、友だちに自分のことを分かってもらえたり、友だちどうしで考えを出し合い何かをつくりあげた経験、自分の力で何かを作り上げた経験を多くもっている。学校でも、地域・家庭でも豊かな経験、感動体験をもっている。
 親は自分に「強い人間になること」を期待し、母親は「自分のことを思ってくれている」と感じている。家庭がホッとできる居場所になっている。そのなかで、自分自身は「家族を大事にする人」になりたいと思っている。毎日の生活の中で、自分が大事にされていることを実感できることで、それを大事にした人生を歩みたいという思いを持っているのではないだろうか。
 社会に対しては、今の社会は努力すればむくわれると思っている子どもが比較的多くなっていて、人にやさしい社会だとは「思わない」は少なく「分からない」が多くなっている。今日の社会の矛盾を感じながらも、地域での助け合いや共同した社会生活が、まだ多く存在する小規模校の地域性が反映しているのではないかと思われる。
 このように、小規模中学校で、大変積極的な面がたくさん明らかになった。今後、より楽しい学校づくりをすすめるうえで、子ども・父母とともに、授業(学校)づくりと部活動のあり方について論議が求められる。
 
(2)大規模の中学校の特徴と課題
 
 中・大規模中学校では、子どもたちの学校と先生に対する要望が多く、「もっと分かるように教えて」「成績だけで評価しないで」「体罰、いやみを止めて」「生徒をバカにしないで」「もっと生徒の意見を聞いて」「校則ゆるめて」「クラブ活動を減らして」などの声が多くなっている。教師と子どもの関係が、管理と校則、競争や成績などの比重が、小学校段階以上に大きくなっている。そのなかで、学校の先生は、うるさく、頼りにならず、私のことを思ってくれていなく、困ったときに受け止めてくれない、などの声が多くなってきている。
 また、親や先生に自分のことを分かってもらってうれしかった経験や、友だちどうしで考えを出し合ってうれしかった経験、自分の力で何かをつくりあげた経験など、感動体験をほとんどもたない子どもが多くなっている。親からは勉強ができることへの期待を多く感じている。学校内だけでなく、家庭や地域社会が、ますます競争の教育に巻き込まれ、「勉強」や「成績」へのこだわりが小学校段階より以上に強くなっている。
 学校が楽しい理由に「クラブが楽しい」が多く、学校が楽しくない理由に「クラブが楽しくない」が多くなっている。学校が楽しくなるのも、楽しくなくなるのも部活動のあり様が問題になっている。行きすぎた部活動、「先輩・後輩」の関係が支配的な部活動などの問題が存在する。一方で、部活動をとおしての成就感や感動体験もある。部活動についての論議がタブー視されることなく、部活動のあり様や学校教育への位置づけなどについて、論議と合意が必要ではないだろうか。
 学校が楽しくない理由に「友だちがいない」も多くなっている。仲間・グループ関係について、いつも行動を共にするグループを持つ子どもは多く、その仲間・グループに自分の正直な気持ちを言えているという実態がある。また、「友だちに自分のことを分かってもらってうれしかった経験」が「よくある」子どもが多く、友だちを頼りにしている子どもが多い。ところが、仲間・グループへの気遣い経験も多く、そのグループは、必ずしも「ホッとする」グループになっているとはいえない。友だち関係で、学校が楽しくなったり楽しくなくなったりという実態があり、友だち関係のあり様が子どもたちのなかに大きな位置を占めていることがうかがえる。
 子どもにとって、父親も母親もともに「うるさい」存在になってきている。とはいえ、母親は困ったときに受け止めてくれる存在であるとも感じている。思春期の中で、これまで素直な「いい子」であったわが子が、思春期になって親への反抗やくちごたえが増え、親の戸惑いがあることもうかがえるが、子どもとぶつかり合いながらも対話を通して、子どもは「私のことを受け止めてくれる」と感じているようになってきているといえる。
 一方、自分自身は、生まれてこない方がよかったと思っている子どもが多くなっている。心が揺れる思春期の時期に、成績や管理、校則などに支配されることなく、授業が分かる喜びを実感できることが求められている。人として大切にされるあたたかい人間関係づくりや、仲間と共に成就感を味わえるようなとりくみや集団づくり、さらに「自分のありのままでいいんだよ」というメッセージを送れるような学校(学級)づくりが大事なポイントといえる。子どもたちが、仲間や親・教師とともに、喜怒哀楽を共有したり、生き方について共に語り合えることなども大切にする必要があるだろう。子どもの権利条約を知らない子どもが多く、その内容について伝えることも課題といえる。
 
 
 
 
 
 
 
§6クロス集計結果分析
 
◆問1「学校は楽しいか」と問17(4)「自分が好きか」のクロス
 相関関係はあるといえる。自分を好きな子どもほど、学校が楽しい傾向にある。学年進行とともに「自分が好きで、学校が楽しい」から「自分をまあまあ好きで、学校がやや楽しい」に変化している。
 
◆問1「学校は楽しいか」と問18(1)「親や先生に自分のことを分かっていもらいうれしかったことがあるか」のクロス
 小学校、中学校とも相関関係があり、「親や先生に分かってもらってうれしかった」という経験を多くもっている子どもほど、学校が楽しい傾向にある。
 
◆問1「学校が楽しいか」と問18(5)「小説や音楽にふれ感動したことがあるか」のクロス
 相関関係はあるといえる。感動体験が多い子どもほど、学校が楽しい傾向にある。小学校中学年では「感動体験がよくあって、学校がたのしい」が、小5以上になると「感動体験がたまにあって、学校がやや楽しく」になり、中3になると「感動体験がよくあり、学校がやや楽しく」なる。
 
◆問1「学校は楽しいか」と問22「仲間のことを気遣ったり、仲間の出番をつくったことあるか」のクロス
 学年による違いは大きくはない。学校が「楽しい」と思っている子どもほど、仲間への気遣いが多くなっている。学校が「楽しくない」子どもについては、「少し気遣う」が最も多く、「よく気遣う」と「気遣わない」の人数は大きく違わない。
 つまり、学校が「楽しい」子どもの方が、「楽しくない」子どもよりも仲間を気遣ったり出番をつくっているといえる。しかし「楽しくない」から仲間を気遣っていないということではない。
 
◆問1「学校楽しいか」と問31(1)「夢のある社会だと思うか」のクロス
 小学校、中学校とも相関関係は若干あるといえる。中学生になると、特に相関関係は薄れる。
 いまの社会を「夢がない」と多くの子どもたちが感じながらも、それが直接的には学校生活に影響しているとは言えない。
 
    民研「子どもと学校づくり」研究班メンバー
      市川純夫(和歌山大学、「子ども」研究班代表)(執筆:§1、§3)
      碓井岑夫(和歌山大学)
      楠本一郎(国民教育研究所)
      倉本茂樹(日高:御坊小学校)
      栗岡耕爾(伊都:西部小学校)
      志場久起(和歌山大学大学院)……(集計表作成)
      下条 昇(伊都教育相談所)
      助野公彦(海草:大野小学校)
      世古淳二(東牟婁:色川小学校)
      竹田安孝(那賀:岩出中学校)
      玉置嘉朗(和大付属小学校)
      中谷弘子(海草:野上小学校)
      中畑博文(有田:湯浅中学校)
      野田重忠(日高相談センター)
      船越 勝(和歌山大学)
      松浦義満(和歌山大学)
      宮川新司(国民教育研究所、「子ども」研究班事務局)
                    ……(執筆:§2、§4、§5、§6)
      森 教二(和歌山:野崎小学校)
      柳生真澄(和歌山:楠見東小学校)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 











 

子どもの声に耳をかたむけて……
12000人「子どもアンケート調査」結果から
        (中間報告)
   
2000年3月30日 発行
編者   和歌山県国民教育研究所
      「子どもと学校づくり」研究班
発行所  和歌山県国民教育研究所
  640-8269 和歌山市小松原通3-20教育会館内
   TEL 073-423-2261  FAX 073-436-3243